
マイクロコピーは、WEBサイトやアプリ上の細かい部分に記載する些細な言葉でありながら、ユーザーの行動に大きな影響を与える重要な要素です。
今回は、マイクロコピーの役割や活用法を中心に、具体的な企業事例を紹介しながら、その効果を解説します。
「コンバージョン率をアップさせたい」
「マイクロコピーの上手な活用方法を知りたい」
という方は、ぜひご覧ください。
マイクロコピーとは?
マイクロコピーとは、WEBサイト上の細部に記載する文言です。例えば、リンクボタン・入力フォーム・ログイン画面などやその周辺に置く短い文章のことを指します。
企業やWEBサイト運営者にとって、マイクロコピーはユーザーの意思決定に影響を与える重要な要素です。うまく活用すれば、クリック・購買・入力などに対するユーザーのモチベーションを高めたり、不安をやわらげたりすることができます。
短い文章でユーザーを後押しし、コンバージョンにつなげることを意識して制作することが大切です。
マイクロコピーの重要性
マイクロコピーは、キービジュアル内のコピーライティングやページタイトルに比べると、重要度は低くなりがちです。しかし、マイクロコピーの変更によってコンバージョン率は約2倍にまであがることもあります。ここからは、マイクロコピーが重要な理由をご紹介します。
ユーザーのストレスを解消して、離脱を防ぐ
マイクロコピーはユーザーの離脱を防ぐ役割を担っています。
せっかく製品を購入しようと考えているユーザーがいても、買う方法がわからなければ、購買にはつながりません。
近年はUIやUXを意識したWEBサイト制作が一般的になりました。そのため、「どこから買えばいいかわからない」という現象はほとんど起こらないはずです。しかし、多くのWEBサイトのUIやUXが向上したからこそ、わかりにくいだけでも、ユーザーにとってはストレスに感じます。
同じような製品を買う際、競合他社のECサイトのほうがスムーズに購入できる状態であれば、ユーザーは他社に流れてしまうでしょう。
購入・予約・申し込み・登録・ダウンロードなど、どのようなアクションであっても、ユーザーはストレスを感じると離脱する可能性が高くなります。最後までスムーズに画面遷移できるようユーザーをCVに導くのが、マイクロコピーの重要な役割です。
コンバージョン率がアップする
マイクロコピーをうまく活用すれば、コンバージョン率アップにつながります。
例えば「お申込み」ボタンの上下に「無料トライアル受付中」「いつでも解約できます」などのマイクロコピーがあれば、ユーザーの心理的ハードルを下げることができます。
このような懸念点を払拭する一言をボタンなどの周囲に記載すると、マイクロコピーがない状態よりも格段にアクションにつながりやすくなります。
SEOに影響する
マイクロコピーはSEOにも影響します。
マイクロコピーがあることで直帰率が減少したり、ページ回遊率が上がってユーザーのWEBサイト滞在時間が長くなったりすることで、検索結果に上位表示されやすくなるのです。
Googleはユーザー目線のWEBサイトであることを非常に重視してアルゴリズムを作っています。Googleが評価している項目や方法を詳細に公開しているわけではありませんが、マイクロコピーがユーザーに与える利便性は確実に評価されるポイントでしょう。
マイクロコピーを活用すべきWEBサイトの場所は?
ここからは、WEBサイトのなかでマイクロコピーを活用できる場所と、具体的な文言についてご紹介します。
ボタン
ボタン上に記載する「お申込みはこちら」や「無料相談はこちらから」などの文言はもちろん、その上下に記載するような文字もマイクロコピーです。
例えば、自社サービスについて伝えるホワイトペーパーのダウンロードを促すボタンの上や下に「10,000社が導入」などと記載することで、サービスへの信頼性を高めることができます。
購入ボタンであれば、上下に「ポイント2倍キャンペーン中」などと記載すれば、さらに購買意欲が高まるでしょう。
ほかにも、登録ボタンの上下に「登録は3ステップ」などと書いておくことで、登録に時間がかからないことや、手軽な印象を与えられます。
登録画面
登録画面には、ユーザーの登録情報を記入してもらわなければなりません。
基本情報を「氏名」「電話番号」「生年月日」にするか、「お名前」「お電話番号」「お誕生日」にするか、などもマイクロコピーの範疇です。ターゲットとなるユーザーがどのような方なのかによって、印象を変えるとよいでしょう。
また、ハイフンなどの記号を含む場合、入力フォームのなかに「080-XXXX-XXXX」など記載例を入れることで、正しい入力方法をユーザーが判断しやすくなります。
フォーム下に「ハイフンを入れてご記載ください」と書くこともマイクロコピーの範疇です。あるいは「無料電話相談にのみ利用します」などと記載すれば、営業電話が何度もかかってくるかもしれないというユーザーの不安をやわらげることができるかもしれません。
ログイン画面
ログイン画面は、ユーザーがアカウントにアクセスできるようマイクロコピーを配置しましょう。特にパスワード入力フォームの下に「英数字8桁以上」など、ユーザーがパスワードを思い出しやすいように、パスワードの条件を記載することが大切です。
また、GoogleやFacebookのアカウント経由でログインできるWEBサービスの場合、ボタンの上下に「Facebookには投稿されません」などの文言があると、ユーザーの不安を払拭することができます。
メニュー/ナビゲーション
WEBサイトのメニューやナビゲーションの文言もマイクロコピーです。わかりやすい順番や言葉で、ユーザーがWEBサイト内を移動しやすいようにしましょう。
一般的には、商品一覧やお問い合わせなどをメニューとして設定していることが多いでしょう。さらにCEOインタビュー・社員の声・CSRなど、よりユーザーの信頼につながるようページを作成し、メニューやナビゲーションに追加することで、コンバージョンや売上アップにつながります。
また、Q&A・お問い合わせなども設置し、ユーザーがどこに連絡をすれば不安や疑問が解消されるのか、わかりやすくすることも大切です。
読み込み中の画面
サーバーの状態やユーザーの状況によってWEBページの読み込みが遅くなることを考慮し、ユーザーが何らかのアクションを行ったあと、処理実行中であることがわかるようマイクロコピーを活用するのもおすすめです。
「ただいまページを読み込み中です」「ダウンロード中」「ロード中。少々お待ちください」などの文言があれば、ユーザーが離脱することなく次のステップに進むことができるでしょう。
場合によっては「画面が切り替わらない場合は、こちらをクリックしてください」と次のアクションを促すことも大切です。
ただし、決済画面ではロード中に離脱されてしまうと決済がうまくいかないおそれがあります。「処理中です。画面を切り替えないでください」など注意を記載するとよいでしょう。
お問い合わせ画面
ユーザーが申し込みや購入に関する不安点を質問できるよう、お問い合わせページを作成することも重要です。お問い合わせ画面に遷移するためのボタンは、単に「お問い合わせ」と書くこともできますが、例えば「まずは無料で相談してみる」と、動詞で書くだけでもクリック率が上がりやすくなります。
また、意見を伝えたい場合に、該当の場所を示すテキストを配置します。
お問い合わせ画面では、問い合わせ内容を選ぶボタンなどの近くに「お困りごとは何ですか?」などのマイクロコピーを置くだけで、スタッフが近くにいるような安心感を創出できます。
また、「3営業日程度でご返信いたします」など、返信までの日数をマイクロコピーで記載するのもよいでしょう。
404ページ
ユーザーが、存在しないページにアクセスしたときに表示するのが「404ページ」つまりエラーページです。企業が削除したページにアクセスした場合や、URLを打ち間違って元から存在しないページにアクセスした場合に表示されます。
「お探しのページは見つかりませんでした」などのマイクロコピー表記を見かけることが多いでしょう。しかし、それだけでは非常に簡素で、ユーザーをがっかりさせてしまうかもしれません。
「トップページからほかのコンテンツをお楽しみください」や「こちらの商品がおすすめです」など、なにかしらユーザーが次のアクションを取れるような工夫をすることが大切です。
ページが見つからないことは、ユーザーのストレスになります。そのため、むしろ楽しめるページにしようと工夫する企業も増えています。
アプリのプッシュ通知
アプリのプッシュ通知もマイクロコピーとして、重視されています。設定や機種によっても異なりますが、スマートフォンのロック画面に表示されるのは40字にも満たない文字数の文章です。
ユーザーの興味をそそり、アプリを開いてもらうために、魅力的なコピーを作成しましょう。
「1日20食限定!スペシャルディナーのご予約受付中」「テレビ放送で話題のメイクセット再販決定」など、限定的な情報・プレゼント情報・新着情報をはじめ、話題のトピックですぐに知りたいと思わせるような内容が効果的だとされています。
マイクロコピーを上手に活用している企業事例
マイクロコピーの基本をご理解いただけたところで、実際にマイクロコピーをうまく活用している企業の事例を見てみましょう。
Netflix
ドラマや映画が視聴できるメンバーシップ制のストリーミングサービス「Netflix」は、ユーザー登録へ進むためのメールアドレス入力フォーム上に「料金は¥890から。いつでもキャンセルできます。」という文言を置いています。
引用元:Netflix『Netflix (ネットフリックス) 日本 - 大好きな映画やドラマを楽しもう!』(参照 2024-10-05)
Netflixはサブスクリプション サービスであるため、すぐに解約できることがユーザーの登録に対する心理的ハードルを下げます。また、料金が明記されているところも安心です。
さらに、登録ボタンには「ご登録」ではなく「今すぐ始める」と記載されています。一般的な登録ボタンとは違いユニークかつわかりやすい表現にしていることで、登録のハードルを下げています。
定番の型を上手に使ったマイクロコピーといえます。
Yelp
アメリカ発で世界最大のローカル口コミサイト「Yelp」には、レストラン・病院・美容院・法律事務所・リフォーム会社などのさまざまな施設が登録できるサービスです。Yelpのマイクロコピーの活用方法は非常にユニークで、ユーザーに親近感を抱かせるものになっています。
例えば、プロジェクトページでは、リフォーム会社一覧の上に「リフォーム会社」とは記載されておらず、造園会社一覧の上に「造園会社」とは記載されていません。「あなたの家をもっと幸せな場所にしましょう」や「裏庭に隠れ家を作る」などと記載されています。
また、プロジェクトを探す地域を現在地に設定しようとしてエラーになると、検索フォームの下に「おっと!現在地が見つかりません。」とマイクロコピーが表示されます。話し言葉のような一言「おっと!」をつけるだけで、親近感を感じさせます。
さらに、レビュー一覧の上には「お客様の信頼は弊社の最優先事項であるため、企業はレビューを変更または削除するために料金を支払うことはできません。」とマイクロコピーによって明記されています。
レビューの信頼性が非常に重要な口コミサイトならではの、ユーザーの不安を払拭するマイクロコピーです。
ライフネット生命
生命保険会社「ライフネット生命」は、トップページ下部に見積もりボタンを固定しています。
引用元:ライフネット生命保険『お手頃な生命保険・医療保険はネットで!』(参照 2024-10-05)
見積もりボタンには「無料で10秒見積もり」と、具体的な数字が記載されています。また、たった10秒というのは、多くのユーザーに手軽さを感じさせます。
さらに「見積りに個人情報の入力は不要!」とボタン上にマイクロコピーを設置しています。それによって見積もりのあとに執拗な営業電話がかかってくるのではないかなどの不安を取り除いています。
ピクサー
映像制作会社のピクサーは404ページがユニークです。存在しないURLにアクセスしてしまうと、悲しそうに泣いているキャラクターと「ああ、泣かないで」というマイクロコピーが表示されたり、驚いた顔をしたキャラクターと「心配しないでください、すべてはうまくいきます」というマイクロコピーが表示されたりします。
想定していたページに辿り着けないことは、ユーザーにとってストレスになってしまいますが、エラーメッセージやページのデザインで楽しい体験を提供することで、ストレスをなくし、むしろ404ページに辿り着いたことを嬉しく思わせるような工夫は、非常に参考になります。
【基礎編】効果的なマイクロコピーを作成するには?
マイクロコピーを作成するにあたって、どのようなことを意識すれば効果が得られるのでしょうか。6つのポイントをご紹介します。
わかりやすい言葉を使う
前述のように、マイクロコピーはコンバージョン率に影響を及ぼす重要な要素です。だからこそ、専門用語などのユーザーに伝わりにくい言葉は避け、わかりやすい言葉を使いましょう。
例えば、IT企業向けであれば「ホワイトペーパーダウンロード」でもよいかもしれませんが、食品メーカー向けなら「お役立ち資料ダウンロード」とするほうが伝わりやすいのではないでしょうか。
考えなくても次のステップに進めるようにする
「新規アカウントを作成してサービスを利用する」など、ユーザーが次に起こすべき行動をそのまま文字として置くのも効果的です。UIやUXを意識したWEBサイトやアプリが増えたことから、ユーザーはストレスなく次のステップに進むという体験を積んでいます。よく考えなければ、何をすればよいのか、何を入力すればよいのかわからないページでは、ユーザーが離脱してしまいます。
マイクロコピーを活用して、ユーザーがよく考えなくても、どんどん次のステップに進めるようにしましょう。
その場での行動を呼びかける
ユーザーに行動を呼びかけることも非常に大切です。ユーザーが一度ページから離れると、また戻ってくる可能性は低くなります。商品やサービスが気になってページを読み進めている段階で、すぐに行動してもらうことが大切です。
「まずは登録」や「このチャンスをお見逃しなく」など、少しでも「登録してみようかな」「いま購入しようかな」と後押しできるような言葉を記載すると効果的です。
ユーザーの不安をやわらげる
ユーザーが会員登録や購入において、不安を持っていることは少なくありません。そこで、不安をやわらげ、心理的なハードルを低くするのもマイクロコピーが果たす大きな役割です。
多くの人が入力フォームへの記載項目が多いと面倒に感じるものです。そのため「3ステップで簡単登録」「1分で登録」などの言葉を記載するとハードルを下げることができます。
また、サブスクリプションサービスが増えるなか、解約ができないことを不安に思うユーザーも増えています。「いつでも解約できます」「解約も簡単」などの言葉を添えれば不安を軽減でき、登録を促すことができます。
ベネフィットを伝える
「最大50%OFF」や「お友だち紹介でプレゼント」など、ベネフィットを伝えるマイクロコピーも、ユーザーの行動を後押しします。
競合他社サービスと迷っているユーザーにとっては、割引などのベネフィットは決め手になるでしょう。また、すでに自社製品のファンであるユーザーに対しては、友人紹介キャンペーンがあれば、せっかくプレゼントをもらえるならいまの期間に友人に紹介しようと、さらなる行動を起こすきっかけになるでしょう。
具体的な数値を使用する
マイクロコピーに数値を使うことで、説得力を高められます。例えば、「100社以上が導入」や「お客様満足度90%以上」などの数値を記載しましょう。WEBサイトのどこかにすでに書いてある場合でも、ボタンなどの近くにマイクロコピーとして置くのがおすすめです。
多くのユーザーはWEBサイトの一言一句を読んでいるわけではありません。ボタンの近くであれば、申し込みなどを考えている、申し込み確率の高いユーザーに届くため、最後の一押しになるでしょう。
【応用編】効果的なマイクロコピーを作成するには?
ここからは、マイクロコピーを活用して、さらなる効果を出すためにできることをご紹介します。
A/Bテストを実施する
マイクロコピーでさらに効果を出すためには、A/Bテストの実施がおすすめです。特にコンバージョンに直結するボタン周りのマイクロコピーは、A/Bテストで効果を確かめましょう。
A/Bテストとは、一種類のマイクロコピーだけを使用するのではなく、同時にAパターン・Bパターン・Cパターンと、いくつかのパターンを作成し、ランダムにユーザーに表示することです。それによって、それぞれの成果が比較できます。より効果的なパターンを見つけて、どれを採用するかを確定させましょう。
カスタマージャーニーを意識する
カスタマージャーニーとは「ユーザーの購買までの道のり」を表すフレームワークで、ユーザーがどのように商品を認知し、関心を持って購入に至るのかを1 つの道筋で考える思考法のことです。
ユーザーが申し込みや購入をするまでの経路を確認し、興味や関心がどのように移り変わっていくのかを意識することで、WEBサイト内で移動しづらいページがあればマイクロコピーで誘導することができます。また、不安や疑問が残りそうな箇所をマイクロコピーで払拭したり解決したりできます。
まとめ
マイクロコピーは、小さな言葉の力でユーザー体験を大きく変える重要な要素です。マイクロコピーによって、WEBサイトのユーザー体験を向上させ、コンバージョン率を高めることができます。ユーザーの不安を軽減したり、スムーズな操作をサポートするために、適切な場所に適切なマイクロコピーを設置しましょう。
さらにマイクロコピーを効果的に活用するために、カスタマージャーニーに関する詳しい資料もご用意しています。ぜひダウンロードしてください。