事業の成長には、自社の市場での立ち位置を理解し、競合他社の状況を把握し、どのような戦略を立てるべきか論理的に考えることが大切です。そのためには、マーケットシェアの理解は必須です。
このコラムでは、マーケットシェアとは何か、シェア率の計算方法や目標値、シェア率を向上させるための具体的なアプローチなどを徹底解説していきます。
ぜひ、マーケットシェアを効果的に活用して売上や利益向上に活かしてください。
マーケットシェアとは
マーケットシェアとは、市場占有率のことです。企業が提供している商品やサービスが、ある市場の中でどれくらい売れているのかの割合を指します。通常パーセンテージで表します。
例えば、同じカテゴリの商品が100個あり、特定のブランドが30個売れていれば、そのブランドのマーケットシェアは30%です。
商品カテゴリだけでなくエリアや期間などを定めて、対象となる市場における占有率を把握することで、販売・マーケティング戦略、競合他社との差別化、製品開発などに活かすことができます。
一般的に、売れているほど口コミを耳にしたり、商品を目にしたりする機会も多くなります。そのため、マーケットシェアが高ければ、ユーザーが商品やサービスを購入するときに真っ先に候補として挙げられるでしょう。
ユーザーは、金額の高い商品であるほどマーケットシェアを重視する傾向があります。マーケットシェアは企業の売上や利益に直結する指標なのです。
マーケットシェアを把握するメリット
マーケットシェアを把握するメリットを4つご紹介します。
市場内での自社の立ち位置がわかる
マーケットシェアを把握することで、特定の市場における自社の立ち位置がわかります。
そもそも自社と同じカテゴリにはどれくらいの企業があるのか、そのなかで自社は何番手なのか、どれくらいの影響力があるのかを理解することは、的確な目標設定の基礎になります。
感覚ではなく数値化して現状を把握して目標設定をすることで、いつどれくらいまで拡大すべきなのか、論理的に事業戦略を立てることができるでしょう。
競合他社との差を把握できる
競合他社との差を把握できることも、自社の現状のマーケットシェアを知る重要性の1つです。
あらゆる競合他社との差を明確にすることで、どれくらいで追いつけるのか、そのためには何をすべきかなどに意識を向けられます。
また、ベンチマークにすべき企業を探ることができます。例えば自社がシェア率10%であるなら、シェア率60%の企業を参考にするよりも、まずはシェア率30%の企業を参考にするほうが現実的かもしれません。
最大手ではなく、シェア率が自社よりも少し高い企業のマーケティング戦略を参考にしたことで売上につながるというケースも多くあります。
新規事業の参入判断や計画に役立つ
新規事業を展開する際には、特にマーケットシェアの把握が欠かせません。
対象となる市場にはどれくらいの競合他社があるのか、それぞれの企業のシェア率はどれくらいかを把握することで、本当に参入すべきかどうかの判断材料となります。
競合調査ができるため自社の優位性を理解でき、いざ参入するなら自社はどのような戦略を立てるべきかを計画しやすくなるでしょう。
取引交渉を強化できる
自社のシェア率が高い場合は、取引交渉において有利に働きます。つまり、シェア率が高いほど市場への影響力が大きいということです。そのため、価格や条件の交渉において有利に取引できます。
例えば、シェア率が高い商品を店に置いてもらう際、その個数や売上に対して支払ってもらうパーセンテージなどを高く設定できる可能性があります。
マーケットシェアの計算方法
ここからは、マーケットシェアの計算方法をご紹介します。
シェア率には、絶対的市場シェア率と相対的市場シェア率の2種類があります。
絶対的市場シェア率の計算方法
- 絶対的市場シェア率の計算式
- 絶対的市場シェア率 =自社における対象商品の売上÷特定の市場の売上×100
絶対的市場シェア率とは、市場全体の売上に対して自社の商品やサービスがどれくらいの割合を占めているかを表す指標です。
調査目的によって「市場全体の売上」を適宜定義し、必要に応じてシェア率を導き出すことができます。
例えば、あるリンゴを売っている企業がシェア率を求める際、日本国内のリンゴの総売上から導き出すことができます。あるいは、1個あたり300円以上のリンゴのみを市場として求めることもできるでしょう。さらに、ユーザーの属性や地域を「主婦・30代・関東地方」などに絞って対象市場とすることも可能です。
まずはシェア率を高めやすいセグメントで市場を決定し、ターゲットを絞って販売やマーケティング戦略を立てるのに役立てるのがよいでしょう。
相対的市場シェア率の計算方法
- 相対的市場シェア率の計算式
- 相対的市場シェア率=自社の絶対的市場シェア率÷比較する企業の絶対的市場シェア率×100
相対的市場シェア率とは、競合他社のシェア率と比較したときの自社のシェア率を算出する指標です。
例えば、特定の市場において、リンゴのシェア率1位の企業と自社を比較すると、自社は1位の企業の何パーセント程度かを把握することができます。つまり、1位の企業に追いつくには、現状の2倍売り上げなければならないのか、5倍売り上げなければならないのかなどがわかります。
特にベンチマークとしている競合他社がある場合は、相対的市場シェア率を基準として追いつけるように施策を決めていくのがよいでしょう。
相対的市場シェア率を求めるには、絶対的市場シェア率の数値が必要です。
マーケットシェアの目標値
アメリカの数学者B.O.クープマンによると、マーケットシェアの目標値は、独占的市場シェア・安定的トップシェア・市場影響シェア・並列的競争シェア・市場認知シェア・市場存在シェアの6つに区分されます。
マーケットシェアの6つの目標値
独占的市場シェア:73.9%
シェア率が73.9%を超えると、独占的寡占状態だと言えます。ここまで来ると、単にシェアトップであるだけでなく、他社が短期的に市場シェアを奪還するのは困難です。自社は絶対安全で、市場をコントロールできる状態です。
安定的トップシェア:41.7%
3社以上が参入している市場でシェア率が41.7%程度あれば、市場のトップとして安定した地位が確保できます。下位の企業は追いつくのが困難になるでしょう。大きな問題を起こさない限り、安定的に事業を展開することができます。
市場影響シェア:26.1%
シェア率26.1%と聞くと、あまり多いと感じないかもしれません。しかし、実際に20%を超えている場合、市場のトップあるいは市場に大きな影響力を有する程度です。優位でありながら他社と健全な競争を行うことができる理想的なシェア率と言えます。
並列的競争シェア:19.3%
複数企業が拮抗し、並列的に競争が起こっている状態では、シェア率が19.3%程度が通常です。まだ安定的なトップの地位を得ている企業はなく、競合他社よりもシェア率を高める施策が重要になります。ユーザーにとっては、よりよい製品をお手頃に手にいれることができる時期と言えるでしょう。
市場認知シェア:10.9%
シェア率10.9%は、ユーザーが製品を購入する際「あのブランドにしようかな」と想起するようなレベルです。同じ市場の他社からも存在を認識されているでしょう。その分、競合となり競争が激しくなります。
市場存在シェア:6.8%
ユーザーが製品を見てブランドをすでに知っていると気づいたり、ブランド名を聞けば知っていたりする状態がシェア率6.8%程度です。ユーザーに知られ、市場で成長していける準備が整った段階と言えるでしょう。
シェア率の目標設定における注意点
日本では独占禁止法により独占的状態が規制されており、公正取引委員会が提示する「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によれば、マーケットシェアが20%を超えることが有力な事業者の目安とされています。
一定のシェアを超えることにより、新規参入者や既存の競争者が排除されるおそれがある場合、もしくは取扱商品等を制限する行為によって、その商品の価格を自由にコントロールできてしまう場合には、法的措置を命じられる可能性があります。法的措置には、事業の一部を他社へ譲渡するなどの方法があります。
必要に応じて弁護士にも相談しつつ、目指すシェア率を設定しましょう。
マーケットシェアの調査方法
市場規模であれば、官公庁や業界団体などの統計を確認することができますが、マーケットシェアについては、基本的に公的な機関では発表していません。
そのため、民間企業などが公開している資料で確認することになります。ここでは、マーケットシェアの主な調べ方をご紹介します。
民間の調査会社で確認する
マーケティングリサーチなどを手がける民間の調査会社であれば、マーケットシェアを公開していることが多いです。富士経済のような総合調査会社をはじめ、業界特化型の専門調査会社もあります。
民間の調査会社は、メーカーや流通事業者へのアンケートやインタビューを独自に行い、資料を作成しています。
企業シェア・ランキング・チャネル別データなどをグラフや図形を使って可視化している企業が多いため、非常にわかりやすく、おすすめです。
ただし、公的な機関が公開している資料とは違い、料金が高額である資料が多いため予算が必要です。
新聞や雑誌で探す
新聞や雑誌では、民間の調査会社のレポートから引用して業界シェアを紹介しているケースがあります。
必ずしも毎日の新聞にマーケットシェアの情報が書かれているわけではないため、リサーチには時間がかかるかもしれません。しかし、有料で高額な民間の調査会社のレポートを購入する予算がないときは、新聞や雑誌を探してみるのもよいでしょう。
特に新聞には速報性があるため、リアルタイムに状況を把握できます。
シンクタンクや金融機関のレポートを確認する
政治・経済・科学技術などの研究機関であるシンクタンクや金融機関が発行するレポートでも市場動向がわかります。新聞や雑誌と同様に、民間の調査会社のレポートから引用して業界シェアを紹介しているものもあります。
グラフや図形を使ってわかりやすくまとめているケースが多く、おすすめです。インターネット上に無料でPDFなどによって開示されているケースもあります。
企業のIR情報を参照する
企業によってはIR情報で市場シェアを掲載しています。IRとは、投資家向けの広報です。上場企業であれば、基本的にIR情報を自社のホームページに記載しています。資料の作り方は企業ごとに異なりますが、シェア率が高い企業ほど、投資家への信頼性を高めるために市場シェアを掲載しているケースが多いです。
インターネットで検索する
インターネット検索によってマーケットシェアを探ることもできます。さまざまな企業や個人が調査をして、ブログ記事などにしています。
しかし、インターネットの情報には信憑性が薄いものもあります。特に専門家ではない個人が書いた記事などであれば、あくまで参考程度にし、なるべく信頼性の高いサイトから調べるべきでしょう。
マーケットシェア調査における注意点
マーケットシェアを調査する際、以下のことに注意しましょう。
他社の参入や動向チェックも欠かせない
特定の市場における自社のシェア率は、他社が参入すれば自ずと下がります。また、自社のシェア率が上がったからといって、必ずしも自社の売上が上がるわけではありません。同じ市場の競合他社が不祥事などで売上を下げたケースもあります。
マーケットシェアを分析する際、以前のシェア率から大きな変化があった場合は他社の動向も確認しなければ、そこから本当に自社がやるべき施策は見えてきません。
変化があれば、その都度、他社の動向もチェックしましょう。
一時的な要因も加味しなければならない
流行や季節など、自社のシェア率が一時的に乱高下することがあります。他社の動向だけでなく、世間一般の動向にも注目しなければ、本来の自社のマーケットシェアは見えてきません。
マーケットシェアを分析して以前のシェア率から変化があった場合は、トレンドに左右されていないかを判断しましょう。流行や季節の影響であれば、時期が終わればシェア率はもとに戻ります。世間の潮流を踏まえたマーケティング戦略を立てることが重要です。
将来性を予測することは難しい
マーケットシェアは、特定の期間や時期についてのシェア率を表す数値です。もちろん、過去や現状を分析して将来どのように展開すべきかを考えることが重要ですが、一方で、いつ新規参入企業が現れたり、トレンドが変化したりするか予測するのは非常に困難です。
そのため、あまりに先の未来を予測するには向いていません。どれくらいのサイクルでシェア率を調査し、どれくらいまで先のための施策に取り入れるか、よく検討する必要があります。
マーケットシェアを伸ばす方法
ここからは、マーケットシェアを広げる方法についてお伝えします。
エリア戦略を立てる
まず、エリア戦略を立てることがマーケットシェアの拡大につながります。エリア戦略とは、特定の地域に絞って販売・マーケティングを行うことです。
エリアごとに、どのようなものが売れるかは異なります。都会か田舎かはもちろん、都道府県や関東・関西・東海などの地域によって分けることもできるでしょう。
エリアを特定し、1つのエリアで売上を最大化してシェア1位を目指すのがエリア戦略です。例えば、福岡県でシェア1位の明太子なら、福岡県のほとんどの土産店や定食屋で取り扱っているでしょう。近隣の九州県から訪れる方々の目にも触れ、福岡県を通るときには購入するという方が増えれば九州全域でシェア1位となります。さらに、本州などの他府県から訪れる方々にもおすすめされ、通販などで購入される機会も増えます。
エリア戦略を行うために分析すべき項目は次の通りです。
- 市場規模
- 競合数
- 人口分布
- 年齢別と性別の人口数
- 地域の生活の特徴
- 地域特有の慣習
- 消費傾向
- 主な情報伝達手段 など
マーケットインとプロダクトアウトを意識する
製品開発や販売戦略として多くの企業が取り入れている考え方にマーケットインとプロダクトアウトがあります。
マーケットインは、ユーザーのニーズをもとに製品を開発・販売することです。
一方、プロダクトアウトは、企業側の技術や計画をもとに製品を開発・販売することです。
売れるものを提供するのか(マーケットイン)、売りたいものを売るのか(プロダクトアウト)の違いだと考えるとわかりやすいでしょう。
マーケットインとプロダクトアウトは、両方のバランスが大切です。一見マーケットインのほうが売上はあがりそうですが、人々がそもそも自分のニーズに気づいていないことはよくあります(=潜在ニーズ)。本人たちが気づいていなかった潜在ニーズを満たす商品が、大ヒットにつながることも多くあります。
マーケットインとプロダクトアウトをどちらも意識して開発や販売をすることでマーケットシェアは広がっていきます。
ブランディングを強化する
ブランディングを強化して、自社製品の個性を確立させることもマーケットシェアの拡大につながります。
他社製品との差別化を図ることはもちろん、ブランドとして理念や商品価値を提示し、浸透させることで、どんどん自社製品が選ばれやすくなります。
「機能が優れているから」「価格が安いから」という理由ではなく、「この企業・このブランドだから買う」というユーザーは愛着心を持っているため、口コミで広げてくれやすく、リピート購入率も高いユーザーです。
このようなユーザーが増えるほど、シェアは広がっていきます。
商品やサービスの質を高める
商品やサービスの質を高め続けることも、シェア拡大における重要なポイントです。
現代は、インターネットで簡単に口コミにアクセスできます。多くのユーザーが一般ユーザーの口コミを参考に商品やサービスを購入します。そのため、商品やサービスの質を高めることはシェアを拡大するという視点だけでなく、そもそも縮小させないための基本と言えます。
確実な商品力があれば、他社に自社のシェアを奪われにくくなり、リピート購入やほかの製品の購入にもつながりやすくなるため、技術力を向上し続けることも大切です。
まとめ
現状のマーケットシェアを把握して自社の立ち位置を知り、シェア率を拡大していくために戦略を立てることは、確実な事業成長につながります。
マーケットシェアを広げるにはさまざまな方法がありますが、なかでもブランディング強化や口コミ対策は、マーケットシェア拡大の基礎とも言えます。
A8.netでは、アフィリエイト広告の活用によって企業のブランディング強化や口コミ対策をサポートしています。マーケットシェアを広げるために有効な施策を検討されている方は、ぜひ以下の資料もご覧ください。