無料と有料を組み合わせた収益モデル、『フリーミアム』をご存知でしょうか。
フリーミアムは、古くからあるマーケティング手法の1つですが、WEBサービスとの相性が良く、さらにサブスクリプション(サブスク)との相性も良いため、近年多く見受けられるようになりました。
本コラムでは、フリーミアムの基礎知識やメリット・デメリット、成功事例などについて解説します。
フリーミアムとは
フリーミアムとは、フリー(無料・Free)とプレミアム(割増料金・Premium)を組み合わせてつくられた言葉です。
フリーミアムは、基本的なサービスをユーザーに無料提供し、サービスに付随するさらに便利な機能などを有料で提供する仕組みとなっています。
無料でサービスを使いはじめられるため、ユーザーにとって利用ハードルが低いのが特徴です。フリーミアムを活用すれば、ユーザーの間口を広げることができます。
また、フリーミアムはサービスそのものの一部を無料にしているため、コスメや食品などの試供品を無料配布する場合と違い、製造コストも抑えやすいことも特徴です。
フリーミアムは、有料ユーザー5%でも成り立つ!?
フリーミアムについて最も身近なモデルは、WEB自体だといわれています。WEBは、パソコンやスマホから、誰もが無料でアクセスできるものです。
デジタルコンテンツには5%ルールという法則があります。これは、仮に95%が無料ユーザーであっても、有料ユーザーが5%いればビジネスが成り立つという法則です。
有料ユーザーが5%というのは少ないように思えるかもしれません。しかし、デジタルコンテンツのユーザー全体を考えると、たった5%であっても、十分にビジネスが成立するのです。
フリーミアムにおいても、5%ルールが成り立つと考えられます。裏を返すと、5%でも成り立つような料金設定などを行う必要があるともいえます。
フリーミアムとサブスクリプションの違い
フリーミアムと混同しやすい仕組みに、サブスクリプション(サブスク)があります。ここでは、フリーミアムとサブスクリプションの違い、そして2つが混ざった融合型を解説します。
フリーミアムとサブスクリプションの違い:支払い対象が違う
サブスクリプションは、商品やサービスを利用できる月額・年額といった「期間」に対して、代金を支払う定額制サービスのことです。一方で、フリーミアムは高度な技術やスペックなどの「機能」に対して、代金を支払っていると考えられます。
フリーミアムとサブスクリプションの違い:課金方法が違う
サブスクリプションは、毎月または毎年という単位で継続課金するものであり、どのユーザーも料金を支払わなければ利用できません。
フリーミアムでは、基本的な機能を無料で使用できます。有料の機能を利用したいときだけ課金すればよいのです。有料機能は買い切りになっていることも多く、必ずしも毎月支払わなければならないわけではありません。
フリーミアム×サブスクリプションの融合型が主流に
フリーミアムとサブスクリプションを融合させて仕組み化するサービスも多く生まれています。
サブスクリプションは、利用開始時から課金しなければならないため、ユーザーにとってはやや導入ハードルが高いといえます。そのため、ある程度の機能を無料にして、有料機能をサブスクリプションで提供するモデルが増えているのです。
企業としては、有料機能を買い切りにしてしまうと継続的な売上が見込めないおそれがあります。だからといって価格を高く設定してしまうと、ユーザーは離れていってしまいます。
そのため、無料提供をしてから有料機能を複数の価格帯プランでサブスクリプションにするという新たなフリーミアムが、今後ますます主流となると考えられます。
フリーミアムのメリット・デメリット
ここでは、フリーミアムのメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
フリーミアムのメリット
サービスを体験してもらえる
ユーザーにサービスを体験してもらいやすい点は、フリーミアムの大きなメリットです。
フリーミアムを活用しているのは、有形の製品よりも無形サービスやコンテンツであることが多いです。
無形サービスは、一見しただけではそのサービスの良さや、使い勝手を理解するのは難しいものです。フリーミアムであればユーザーが気軽に使えるため、サービスの良さを実際の体験を通して伝えることができます。気に入ってもらえれば、使い続けてもらうことができるでしょう。
購入してもらいやすくなる
サービスを体験することで、ユーザーから購入してもらいやすくなるのもフリーミアムのメリットです。
すでに無料ユーザーはサービス自体の良さを理解しているため、最初から有料で売り出すよりも、有料サービスを購入しやすい傾向にあります。無料機能が使いやすいほど有料機能への期待度が上がるため、より有料サービスへの転換率は高まるでしょう。
場合によっては、ユーザーは無料で楽しめることに価値や感謝を感じてくれるため、応援のために有料サービスにお金を支払ってくれることもあります。
新サービスでも素早い事業展開ができる
フリーミアムなら、ユーザーが無料でサービスを利用できるため、有料サービスに比べて利用者が増えやすいといえます。新しいサービスであっても、素早く波及できるでしょう。
無料ならとりあえず登録してみよう、ダウンロードしてみようと考えるユーザーは少なくありません。
特に新規事業を展開するときには、まず最初に使ってくれる人(初期ユーザー)を素早く増やすことが重要です。期間限定であってもフリーミアムを取り入れてみるのがおすすめです。
フィードバックを集めやすい
ユーザー数を増やしやすいということは、より多くのレビューを集めやすいということにもつながります。
フリーミアムでは、ユーザーによるレビューのなかから、商品の改善に役立てられるフィードバックを見つけることができます。
例えば、動画コンテンツを配信している場合、Wi-Fiがないところでも視聴したいというレビューが多ければ、ダウンロード機能を追加することができるでしょう。3本までをダウンロード無料、4本目以降は有料とするなど、プランを工夫することで売上向上に繋げられます。
フリーミアムのユーザーは無料で利用しているからこそ、満足度が高いほど、何かしらの形でサービスに貢献しようとしてくれるはずです。レビューを依頼する通知やバナーを設定する工夫なども大切です。
口コミによって、認知が広まりやすい
フリーミアムは、無料だからこそユーザーが友人や家族におすすめしやすく、口コミや拡散による商品認知の拡大が期待できるというメリットもあります。
そのため、SNSでのプロモーションと相性が良いといえます。シェアの依頼やシェアボタンの設置などを忘れないようにしましょう。
認知は、広まれば広まるほど新たな利用者が増えやすくなります。また新たなユーザーが口コミをしてくれれば、さらにユーザーが増えるきっかけとなり、好循環となります。
フリーミアムのデメリット
収益化に時間がかかる
フリーミアムでは、サービスの機能の多くを無料で提供します。そのため、ユーザーがプレミアムプランに移行または課金するまでに、時間を要します。つまり、収益を出すまでに時間がかかるのです。
無料で使用できる代わりに広告を表示するなど、ユーザー以外からの収益の入口を設置しておくことで、収益性に関してはクリアできるでしょう。
運用・仕組みづくりが難しい
どこまで無料で使えてどこから有料とするのか、どんな収益モデルを採用するのか、有料プランを何パターン用意するのかなど、フリーミアムを導入するためには、計画すべきことが多くあります。
また、申込ページや決済サービスの準備、プレミアムプランの利用促進という点でのプロモーションなども必要です。運用・仕組みづくりは容易とはいえません。
身の回りのサブスクリプションや、すでにフリーミアムで成功しているサービスを参考にしながら設計していきましょう。
フリーミアムにおける、4つの収益モデル
サービスを無料で提供するフリーミアムですが、すべて無料で提供するだけでは収益が生まれません。では、どのように課金を促すべきなのでしょうか。フリーミアムの主な収益モデルを4つ、ご紹介します。
機能制限型
フリーミアムを取り入れているサービスで、最も多いのが、機能制限型の収益モデルです。基本機能を無料で提供し、より便利な機能や高度な機能を使いたいユーザーには有料プランを提供します。
例えば、次のような活用例があります。
- 動画視聴サービス
- 無料:動画を無料で見られる代わりに広告が流れる
有料:広告表示がなくなる - 音楽配信サービス
- 無料:オンライン再生のみ
有料:オンライン+オフライン再生も可能 - ビジネスチャットツール
- 無料:7つまでグループ作成可能
有料:無制限にグループ作成可能
容量追加型
無料で使い始められて、課金すれば利用できるデータ容量を増やせる、容量追加型モデルもフリーミアムの一種です。スマホやクラウドサービスで、よく採用されています。
使用頻度が高くなれば、必要なデータ容量も増える傾向にあるため、よく使うユーザーほど、課金しやすいのが特徴です。
容量追加型モデルを使っている例としては、次のようなものがあります。
- スマホ端末のデータ容量
- 無料:128GB
有料: 1TBまで増量可能 - クラウドサービスのデータ容量
- 無料:2GBまで保存可能
有料: 2000GBずつ増量可能
会員限定型
フリーミアムが主流になる以前から、長く取り入れられているのが、有料会員になることで限定特典が得られる、会員限定型です。
有料会員となったユーザーは、毎月または毎年、定額利用料を支払います。会員限定型はサブスクリプション流行以前からある仕組みですが、サブスクリプションに近い構造となっています。
ただし、サブスクリプションのように決まった期間使いつづけることを前提とした月額制や年額制ではなく、解約したいときに解約できるのが一般的です。
有料会員の限定特典としては、例えば次のようなものがあげられます。
- 料理レシピサイト
- 無料:基本的なレシピ閲覧が可能
有料:料理コンテストなど企業主催イベントへの参加が可能 - ファンクラブ
- 無料:最新情報が得られる
有料:コンサートなどのチケット先行予約ができる
都度課金型
基本的なサービスはすべて無料で利用できるうえで、必要な機能をその都度購入する、都度課金型のモデルを採用している製品・サービスもあります。
オンラインゲームのアイテム購入やガチャが、それにあたります。また、メッセージアプリで使えるスタンプも、都度課金型のフリーミアムです。
必要に応じて課金すればよいので、ユーザーにとっては先々の支払いについて心配しなくてもよいという点でメリットです。一方で、サービス提供社側としては、定期的な課金が見込めないため、収益が安定しないという点はデメリットと捉えられるかもしれません。
- スマホゲーム
- 無料: 基本的なプレイは楽しめる
有料:アイテムやガチャを購入できる - メッセージアプリ
- 無料:基本的な機能は使える
有料:スタンプを購入できる
フリーミアムの活用事例
ここからは、フリーミアムを活用した事例として、参考にしたいサービスをご紹介します。
YouTube
フリーミアムの活用事例として、多くの方が利用する動画プラットフォーム「YouTube」が挙げられます。
YouTubeでは、動画の視聴・投稿が無料となっています。誰もが無料で投稿できるからこそ、コンテンツも増え続け、世界中のユーザーが飽きることなく愛用し続けています。
有料サービス「YouTube Premium」を活用すれば、ユーザーは広告なしで動画を視聴できます。また、動画をダウンロードしたうえでのオフライン視聴や提携音楽サービスの利用なども可能です。
ABEMA
パソコンやスマホで視聴できるインターネットテレビ「ABEMA」も、フリーミアムの活用事例です。
多くの番組を無料で見られますが、プレミアムプランへ加入することで、プレミアムプラン限定のコンテンツや追っかけ再生機能などの拡張要素が楽しめます。
プレミアムプランは初月無料で登録できるため、ユーザーは有料版のコンテンツを体験したうえで、支払いを続けるかどうかを決めることができます。
クックパッド
「クックパッド」は、誰でも無料で料理のレシピを投稿・閲覧できる料理サイトです。
料理本とは異なり、スマホやタブレットといったキッチンに置きやすいデバイス上で無料でさまざまな料理のレシピを知ることができ、多くのユーザーから長く愛用されています。
フリープランでも多様なレシピの閲覧や検索もできますが、プレミアムプランでは、さらに高度な絞り込み検索や栄養価の表示が可能です。また、会員限定クーポンの配布やプロによるレシピが閲覧できたりと、豊富な機能を揃えています。
食べログ
グルメサイト「食べログ」では、ランキングや口コミを参考にしながら、誰もが無料で飲食店を探せるほか、レビュー投稿もできます。
プレミアムプランでは、最大20%オフクーポン、広告非表示、口コミが多い順番での検索など、さまざまな特典が利用できます。
初月無料で登録できるだけでなく、口コミを5件投稿すれば、翌月のプレミアム料金が無料になる仕組みが人気のポイントです。
Evernote
「Evernote」は、メモアプリとして老舗のサービスです。
アイデアやプロジェクトをメモするだけでなく、ToDoリストの作成や優先順位付けなど多機能なノートを無料で使用できます。
クラウドを活用しているため、複数のデバイスからアクセスできる利便性も特徴です。
プレミアムプランにすると、メールをEvernoteへ転送したり、名刺をスキャンしたり、PDFを検索できる機能も追加され、より使いやすくなります。
Dropbox
オンラインストレージサービス「Dropbox」も、多くの企業が活用しています。無料の場合は、2GBまでストレージを使用でき、Word・Excelデータ・PDF・写真など、あらゆるデータを保存・共有できます。
課金することで、「Dropbox」上でPDFの編集や動画のプレビューができるほか、不審なアクティビティをアラートする機能もあります。より多くのデータを保存・共有するためにストレージ容量を増やすことも可能です。
ChatWork
ビジネス向けメッセージサービス「ChatWork」は、無料でグループチャットやタスク管理を最大5GBまで利用することができます。1対1のビデオ通話も可能です。ただし、閲覧可能メッセージ数や期間に制限があり、40日以内に投稿された最新5000件までを閲覧できます。
プレミアムプランには、閲覧可能メッセージ数や期間の制限がありません。データの保存容量 は1ユーザーにつき10GBに増え、複数人とのビデオ通話や音声通話もできるようになります。
フリーミアムと相性の良い商材・悪い商材
フリーミアムには、相性の良い商材と悪い商材があります。それぞれ見てみましょう。
フリーミアムと相性の良い商材
コンテンツ数が多い
動画・音楽・ニュース記事などのように、コンテンツ数が多い商材はフリーミアムの活用に向いています。
なぜなら、コンテンツ数が少なければ無料で楽しんでもらえるサービスの量も少なく、フリーの段階で満足度を上げるのが容易ではないからです。
ユーザーにとっては、コンテンツ数が多いほどプレミアム移行時に得られる情報量や楽しみもさらに多くなります。利用可能なコンテンツが一気に拡充すれば、お金を支払うプレミアムユーザーの満足度も高まるでしょう。
機能が多い
サービスに付随する機能が多い商材もフリーミアムに向いています。
その理由は、さまざまな機能によるメリットを活かし、フリーとプレミアムの線引きが行えるためです。
フリーの段階でなるべく豊富な機能を楽しんでもらい、プレミアム移行後には今よりも便利な機能を使えるとなれば、ユーザー数や満足度は、ぐっと高まるでしょう。
コミュニケーションができる
ユーザー同士のコミュニケーションができる商材はフリーミアムとの相性が良いといえます。
コミュニケーションというのは、一過性のものではなく、継続してこそ成り立ちます。また、他のユーザーと深く交流したいと考える方も多いでしょう。そのため、フリーミアムから有料化へのステップを設けやすいといえます。
例えば、先ほど紹介したYouTubeでは、コメント欄でのコミュニケーションが可能です。いいねボタンやメンバーシップ機能などもあります。
クックパッドには、投稿者のレシピを使って実際に料理を作ったユーザーたちが写真付きレビューを行うフォトレポート機能が提供されています。食べログも、口コミ投稿ができるサービスです。
また、ビジネス利用が多いChatWorkは、まさにコミュニケーションツールそのものです。
フリーミアムと相性の悪い商材
高価な商材
フリーミアムは、無料で多くの機能が使えることが特徴です。そのため、高価な商材はあまり適していません。たとえ、ほとんどの機能を無料で使えても、プレミアムの料金が高額であれば、有料で使うのはユーザーにとって負担となり、課金率が低くなると予想されます。
上記の対策として、2か月のみ無料、3か月以降は月額料金を課すなどすれば、売上につながりやすいでしょう。その際、無料期間である2か月のうちは途中解約ができない契約内容にし、解約する場合には使用した2か月分の料金をもらうなど、設計に工夫が必要です。
有形の商材
基本的にフリーミアムは無形サービスと相性がよい戦略です。有形の製品を無料で使ってもらうためには、製品そのものをユーザーに渡してしまう必要があるため、相性が良いとは言い切れません。
しかし、ウォーターサーバーの水や賃貸マンションの部屋など、長期契約を前提とした有形の製品には、初月無料で提供しているような企業もあります。自社サービスが有形の製品であったとしても、フリーミアムを取り入れられる方法はないか探ってみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
フリーミアムはWEBサービスと非常に相性が良く、活用方法もさまざまです。しかし、WEB集客の方法やマーケティング戦略は、フリーミアム以外にも多く存在します。
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