近年、企業のSNSアカウントを見かけることはないでしょうか。
インターネット技術の発達に伴って、マーケティングにおけるSNSの重要度がますます大きくなっています。特にSNS運用は、企業の大小を問わず始められる施策として人気です。しかし、アカウントを開設して情報発信するだけで、フォロワーが集まることはそう多くありません。
フォロワーを集めるコツは、「ユーザー心理」を上手にくすぐることです。
このコラムでは企業のSNS運用のコツを、ユーザー心理を交えてご紹介します。
「SNS担当になったけど、企業SNSの運用方法がわからない」
「SNSアカウントはあるが、活用できていない」
といった方はぜひご覧ください。
企業のSNS運用が重視される背景
最近では、多くの企業がX(旧Twitter)やInstagramといったSNSアカウントを開設し店舗やECといったチャネルへの集客経路として活用しています。
企業がSNS運用に取り組む理由としては、以下が考えられます。
- 若年層の情報源となっている
- ブランディングに繋がる
- コストがかからない
詳しく見ていきましょう。
若年層の情報源となっている
まず大きな一因として、SNSはZ世代をはじめとする若年層の情報収集手段として根付いていることが挙げられます。
ネオマーケティングが実施したZ世代(25歳以下の若い世代)6,953名を対象としたアンケート調査結果によると、普段チェックする情報源として79.8%の人がSNSを利用していると答えています。同調査では、「最もチェックしている情報源」でもSNSが大差でポイントを獲得しており、SNSの有用性が見てとれます。
出典元:株式会社ネオマーケティング『全国のZ世代の高校生・大学生・社会人の男女6953人に聞いた「もっと知りたい、Z世代。 ~情報・人との接し方とは~』(参照 2023-12-10)
Googleなどの検索結果から情報を得ることもありますが、それはあくまで「なにかしらの情報を得てから」の検索行動となり、少なからずハードルがあります。そういった点では、SNSはユーザーが受動的に情報を得るため、より早い段階でユーザーへのファーストタッチが狙えます。
特に商品やサービスの認知拡大には親和性が高いと言えるでしょう。
ブランディングに繋がる
SNS運用を通して自社のブランディングを行う企業も増えています。
ユーザーはSNSのおすすめ投稿などをきっかけに、興味のあるアカウントに遷移し、プロフィールを見て、投稿一覧を確認します。そうした一連の中で発信内容を確認し、商品やブランドのイメージを膨らませていきます。
発信内容に共感したユーザーはアカウントをフォローしてくれます。継続的に情報を受け取れる環境と、継続的な情報発信を続けることでユーザーの温度感を高め、結果的に売上にも繋がりやすくなります。
徐々に自社ブランドのファンを増やしていくことで、「〇〇といえばあのブランド」というユーザーの意識が芽生え、競合他社との差別化が期待できます。
コストがかからない
SNS運用は、アカウントさえ作れば始められます。
企業の大小問わず運用でき、1回の投稿も手軽であることから、ブログやチラシ印刷などよりも簡単に導入できる点が強みです。
本来企業が商品やサービス・ブランドを認知させたい場合は、リスティング広告やディスプレイ広告といったコストの掛かる施策で露出を図ります。しかし、スタートアップ企業や会社規模が小さい企業の場合は広告費の捻出が難しい場合もあります。
SNS運用は、そのような認知拡大に必要な広告費を大幅にコストカットができる点が魅力です。そのため、企業が最初に行うマーケティング施策として、SNS運用が採用されるケースも多く見られます。
企業担当者のSNS運用状況とは?
総務省の調査によれば、SNSを利用している企業の割合は全体の36.7%※1を占めており、上昇傾向にあります。しかし、多くの企業がSNS運用を導入するなかで、企業によって明暗が分かれていることも事実です。
ここでは各企業担当者のSNS運用の実情を見ていきます。
SNS担当者の約40%が「フォロワー300名未満」
フォロワー数は、SNS運用のKPIとしてよく見られる項目です。
しかし先述の通り、ユーザーがアカウントをフォローするまでは一連のアクションが必要であり、そう簡単にフォロワーが増えるとは限りません。
株式会社ネオマーケティングがSNS運用担当者1,000名に行った調査※2では、調査対象者の約40%がフォロワー数300名未満である結果が出ています。300名以上1,000名未満の比率も含めると約60%近くが含まれ、認知拡大という点では最低限1,000名規模のフォロワー数はほしいところです。
また、担当者の中にはそもそもKPIを設定していないケースも見られ、toC事業者は29.2%、toC以外の事業者では18.4%いることがわかっています。
目的を定めずに運用するだけでは思うような結果は出にくく、戦略的な運用が必要であると考えられます。
優秀なSNS担当者が注力していること
同調査の興味深い点として、「SNS運用で力を入れていること」という設問に対し、KPIを達成しているSNS担当者は「フォロワーとのコミュニケーション」が73%で最重視されていることがわかっています。
上記の結果は、各担当者のKPI達成度とも比例しており、特にKPI達成している担当者では圧倒的に上位であることが特徴的です。
コンテンツ内容のクリエイティブや作り込みなど、投稿の質に関わる点はもちろん重要です。しかし優秀なSNS担当者の経験から見れば、まずはフォロワーとコミュニケーションを図り関係性を構築することが、SNS運用成功の秘訣と言えます。
※1 出典元:総務省『平成 30 年通信利用動向調査の結果』(参照 2023-12-10)
※2 出典元:株式会社ネオマーケティング『全国の20歳~69歳の男女1000人に聞いた「企業SNSのヒント」』(参照 2023-12-10)
SNS運用でユーザーの心を掴む方法
SNS運用において、フォロワーとのコミュニケーションが重要だということがわかりました。では、実際にフォロワーとのコミュニケーションの中で、どのような点がポイントになるのか、3つの要素にまとめました。
- “企業から”交流を働きかける
- 投稿頻度と時間を意識する
- 投稿内容はユーザー共感を意識する
それぞれ解説していきます。
“企業から”交流を働きかける
まず重要なのが、“企業から”交流を働きかけることです。
あなたがSNSを見ている際、普段自分の投稿に頻繁に「いいね!」やコメントをくれる人の投稿には、自分もリアクションを返したくなることはないでしょうか。それは企業のアカウント運用でも同様です。
まずはいいねやコメントなど、企業側からユーザーにコミュニケーションを図っていきましょう。企業アカウントの中には自社製品の紹介やキャンペーン情報などの情報発信のみとなっているケースも多いですが、一方通行に発信するだけではフォロワーはなかなか増えにくいでしょう。
人は他者がなにかしてくれたときに返答したくなる「返報性の原理」という心理があります。企業側から積極的にコメントを行うことで、ユーザー側もコミュニケーションが取れるアカウントと認識し、返答しやすくなります。
まずは自社製品に関する感想の投稿などに、いいねやコメントを送ってみましょう。好意的なものだけでなく、ネガティブな投稿にも反応することで、お客様に真摯に向き合う姿勢がアピールできます。結果的に評価が上がる可能性もあります。
反応の高い時間帯や頻度を調べる
仕事や学校など、ユーザーがSNSを見るであろう時間帯はある程度傾向があります。
通勤、通学時間の7~9時や17~19時頃、12~14時のお昼頃、家でのリラックスタイムとしての19~22時頃など、ターゲットとなるユーザーがSNSを活発に利用する時間帯を狙って投稿してみましょう。
定期的に投稿時間を設定しておけば、ユーザー側から投稿をチェックしに来てくれる場合もあります。逆に時間がズレてしまうと、投稿を見逃してしまったり、「あとで見ておこう」と優先順位を下げられてしまう可能性もあります。
また、投稿頻度にも注意が必要です。同時に複数の投稿を行うとユーザーのタイムライン上がその投稿だけで埋まってしまい、迷惑に感じられてしまいます。
投稿頻度と投稿時間には配慮しておく必要があるでしょう。
投稿内容に対するユーザーの反応を考える
投稿内容はユーザーが反応しやすい内容にしましょう。
ここでいうユーザーの反応とは、以下のようなものを指します。
- 共感・納得
- 例:「これはすごい!」「知らなかった!」
- アドバイス・提案
- 例:「〇〇もおすすめですよ!」
- 疑問・質問・相談
- 例:「〇〇の場合はどうですか?」
上記のような反応を引き出すには、投稿者側からも工夫が必要です。
例えば、共感や提案を促す場合、「あなたの感想やおすすめを教えて!」と投稿することで、コメントしやすい雰囲気を演出できます。相談コメントを増やしたい場合は、あえて掲載する情報を網羅しすぎないことで、質問させるといった方法もあります。
そのコメントへの返信をきっかけに丁寧にコミュニケーションを取ることで、信頼性が構築され、そのやり取りを見た別のユーザーもリアクションを送ってくれるようになります。
重要なのは、ターゲット層が興味を持つであろう話題を考え、その投稿への反応を想像することです。有益なコンテンツとコミュニケーションで信頼が蓄積されれば、自社製品の紹介も自然に受け入れられやすくなります。
SNS運用の企業事例3選
では実際にSNS運用を行っている企業アカウントを3つ、ご紹介します。
SHARP(シャープ株式会社)
引用元:『シャープ株式会社公式X(旧Twitter)アカウント』(参照 2023-12-10)
家電メーカーであるシャープ株式会社の公式X(旧Twitter)アカウントには、現在80万人以上のフォロワーがいます(2023年12月現在)。一度は投稿を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
プロフィールには「いただいたリプにはできるだけ反応します。」とある通り、フォロワーとのコミュニケーションが非常に活発で、いわゆる「中の人」のユーモアな心情が垣間見える投稿内容が人気となっています。
自社製品に関する投稿や反応にコメントやリポストで反応することで、すでに知名度の高い大企業でありながら、カジュアルにコミュニケーションをとっている点が、ユーザーとの距離感をぐっと引き寄せています。
DHOLIC(ディーホリック)
引用元:『DHOLIC公式Instagramアカウント』(参照 2023-12-10)
韓国発の女性向けファッションECサイト『DHOLIC』は、Instagramで約60万人のフォロワー数を誇ります(2023年12月時点)。
フィード投稿では、骨格タイプやシチュエーション別のコーディネート提案、特定のアイテムの着回し方法など、ユーザーに有益な情報発信を行いながら自社商品を紹介しています。
コーディネートを織り交ぜて商品を紹介することで、ユーザーは手持ちのアイテムとの組み合わせをイメージでき、自分が欲しい商品をより具体的にすることができます。イメージに合った商品があれば、実際に購入に繋がることもあるでしょう。
また、セールに関する情報は当日の午前8~9時頃に投稿することで、通勤時間にあわせて効果的に訴求を行っています。
ユアマイスター
引用元:『ユアマイスタースタイルInstagramアカウント』(参照 2023-12-10)
クリーニングを中心としたサービスECのプラットフォームを提供しているユアマイスター株式会社のInstagramアカウントは、22万人以上のフォロワーに支持されています(2023年12月時点)。
ほどけない靴紐の結び方や100円ショップの便利アイテム紹介など、暮らしや生活に特化し、常にユーザーファーストな情報提供であることが特徴的です。
同社が運営するWEBメディア『YOURMYSTAR STYLE』では1,300万PVを記録したこともあり、徹底的にユーザー目線に立ったコンテンツ力がSNS運用にも生かされています。
ユアマイスター株式会社のコンテンツマーケティングについては、こちらのインタビュー記事でも詳しく紹介しています。
SNS運用をはじめるためのステップ
最後に、SNS運用を実施するにあたって、どのような手順で進めるかをご紹介します。
1.SNS運用目的とターゲットを決める
まずはSNS運用の目的とターゲットを設定しておきましょう。目的は企業によってさまざまですが、主に以下の4つが代表的です。
- 認知拡大
- ブランディング
- 関係値の向上
- 購入や来店動機の創出
ポイントとして、SNS運用単体では購入や申し込みといった直接的なコンバージョンはやや難しいと考えたほうが良いでしょう。というのも、SNSは認知段階のユーザーが多く、良い商品やサービスを見つけた場合は、WEB上での検索に切り替わるケースもあるためです。
あくまで自社製品を知ってもらう、あるいは来店してもらうなどを意識し、フォロワー数やエンゲージメント率、来店数などをKPIとして追っていくことがおすすめです。
また、SNS運用で訴求するターゲットも同時に固めておきましょう。上記のような顧客の購買段階の全体像を理解するには、ペルソナの作成が有効です。ペルソナとは架空のユーザー像・人物モデルのことで、より具体的な趣味嗜好を設定することで、適切なマーケティングを行いやすくします。
2.SNSを選定する
運用目的とターゲットが決まったら、次に活動の中心となるSNSを選定します。
前提としては目的に合致している、あるいはターゲット層が多いSNSを選ぶことが通常ですが、運用担当者が使い慣れたSNSから始めるのも1つの方法です。なぜなら、どのようなコンテンツが好まれるか、ある程度「受け手側」の経験がすでにあるためです。
Instagram、YouTube、X(旧Twitter)、TikTokのユーザー数や特徴を総まとめした資料は、こちらからダウンロードいただけます。
3.SNSアカウントを開設する
SNSが選定できたら、実際にSNSアカウントを開設しましょう。
特にプロフィールはアカウントの顔となる要素のため、不足のない情報を心がけたいところです。主に下記の情報を掲載しておきましょう。
- ショップ名
- 紹介文(何を提供するブランド・企業なのか)
- 住所(店舗や本社など)
- ハッシュタグ(商品名やブランド名など、固有のものがあれば)
情報量が多すぎると、かえって読みにくくなることもあります。必要な情報を取捨選択して記載しましょう。
4.運用フロー・ルールを決める
本格的な投稿の前には、運用フロー・ルールを決めておくことがおすすめです。
- 投稿頻度・回数・時間
- 炎上時のフロー
- NG内容(公序良俗に反する内容、ギャンブルやアダルトに関する内容はNGなど)
多くの企業では、SNS担当者1名に一任して運営することも多く見られます。しかし、当然ながらSNSは炎上リスクもあるため、どこまでの投稿がOK・NGかの線引きはあらかじめ設定しておくほうが安心です。自由に投稿できる環境だからこそ、企業として求められるルールは最低限作っておきましょう。
また、炎上時はどのような対応、確認フローを取るのかを把握しておくと、冷静に対処しやすくなります。特にSNS担当者が焦って火に油を注ぐ投稿をしてしまわないように、複数人の目線で対応しましょう。
5.コンテンツを投稿する
フローを整えたら、いよいよコンテンツを投稿します。
まずは、投稿するネタやコンテンツをいくつかストックしておくのがおすすめです。例えばInstagramの場合、プロフィール下に表示される投稿は3列の構成になっているため、3件以上投稿しておくと統一感を出せます。その後の投稿も何件か準備しておくと投稿を継続しやすくなるでしょう。
『#(ハッシュタグ)』を活用し、多くのユーザーの目に触れるようにすることで、フォロワー数が少なくとも反応をもらいやすくなります。
そして、あくまで意識すべきはユーザーとのコミュニケーションです。関連性がありそうなユーザーにいいねやコメントを送り、アカウントの存在を積極的に認知させていきましょう。お互いの投稿をきっかけにコミュニケーションを取っていくことでヒントを探り、新たなコンテンツに反映させていきます。
まずは目の前のユーザーに対して、自社のファンになってもらうことを意識しましょう。
まとめ:各SNSの特徴をまとめたお役立ち資料を配布中!
いかがでしたでしょうか。
本コラムでは、企業のSNS運用における運用のコツや事例をご紹介しました。
SNS運用は、使いこなすことができれば、ほぼコストを掛けずに宣伝できる企業にとって強力な手段となります。ぜひあなたの製品にぴったりなSNSを見つけてみてください。
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