3000万円かけて作ったサイトが飛んだ経験から言える運営に大切なこと
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先輩メディア:片山雅弘さん、近藤武さん
トップキャスト代表取締役 片山雅弘
こんにちは!株式会社トップキャストの片山です。
アフィリエイトは2005年ごろに起業を目指して副業ではじめました。その後、2007年には法人化し現在12期目。美容や恋愛、不動産のサイトなどいろんなメディアをスタッフ10名で運営しています。
私にできることはなにかを常に考え、広告主様と検索ユーザーの両方をつなげる価値のある情報の発信ができるように心がけています。
得意なこと:クルマ(運転、メンテの知識など全般)とプログラム開発と検索エンジンの研究。
エグゼクティブアドバイザー 近藤武
2019年春頃にも、また大きな変動があり、私たちもあなたもなかなか大変かもしれませんが、折れずに続けていればきっとまたいいときに巡り会えます。
いいときは襷を締め直し、
悪いときは歯を食いしばって、お互い頑張りましょう!・運営サイト
「Googleのアップデートでサイトが飛んだ」
アフィリエイターの口からしばしば聞かれるこのワード。サイトが飛ぶとは、作った記事の検索順位が、圏外まで一気に落ちてしまうことを指します。当然売り上げも落ちてしまいます。おそらくアフィリエイターが一番恐れていることではないでしょうか。
今回の先輩メディアインタビューは、サイトを2年半運営し、およそ3,000万円かけたサイトが飛んでしまった経験を持つ、株式会社トップキャストの片山さんと近藤さんに登場していただきます。
サイトの検索順位が下がってしまった経緯や原因から、どのようなサイトを製作していくべきか、お話を伺いました。
売り上げが300万ほどあったサイトが飛んだ理由
まずは検索順位が著しく下がってしまったサイトの概要を教えていただけますでしょうか?
片山:「ランクラボ」というサイトで、美容と健康にまつわる情報を幅広く扱うメディアでした。
記事は月に300本ほど更新、最終的な記事数は5,000記事を越えていました。デイリーのPVが15,000で、売上は月に200~300万くらいあったサイトです。このサイトが2018年7月に起こったGoogleのアップデートの影響を受け、売上が良かったキーワードから順に落ちていきました。
売り上げにはどれくらい影響があったんでしょうか?
片山:60~70万くらいまで落ちましたが、3月に起こったアップデートの影響を受けているので、もっと下がっているかもしれません。
原因はやはり……。
片山:記事が飛んだ原因は、やはり記事の質ですね。記事単位の質が悪かったことで、ドメイン全体の質が悪いと判断されたことが大きいのではないかと思います。立ち上げた当初はDeNAのWELQの調子が良かったころで、記事の質より量を担保すれば検索上位を狙えるんじゃないかとザックリした感覚があったんですよね。
月に300記事ずつ更新するとなるとディレクションする側も大変だと思います。どのような制作フローを踏まれていたのでしょうか?
片山:ディレクションは、僕ともう1人のディレクターの2人体制でした。今よりコンテンツの質が重視されなかった分、ライターさんにお任せしてしまう部分も大きかったので、月300記事を捌くのも不可能ではなかったんですよ。
ライターさんは主にクラウドワークスなどで探しましたが、SOHOなどで直接契約したライターさんもいました。増えたり減ったりを繰り返していましたが、一番多いときで30人以上はいたと思います。法人として受けてくれていた方もいたので、1人あたりの執筆本数は数本~数十本とまちまちでした。
ライターへ依頼していた記事の制作単価も気になります。
片山:ライターさんの執筆実績を見ながら価格を決めていたので、3,000~10,000円と、人によってかなり開きがありました。文字単価で依頼する人もいれば記事単価で依頼する人もいましたし、WordPressに入稿してもらうことを条件にしている人もいたので、単価はまちまちでしたね。
5,000あった記事をすべてチェック
記事の質が原因と仰っていましたが、記事の質の良し悪しはどのように判断されたんでしょうか?
片山:5,000記事ある記事をひとつずつサーチコンソールに入れて、表示回数や掲載順位、取れているキーワードなどを確認しました。1週間以上かかりましたが、ランクラボの記事をひとつずつ目視でも確認して、いったい何がダメだったのかを考えましたね。最終的には、評価されていなかった4,000記事を削除しました。
5,000記事をひとつずつ目視ですか…!?低品質の記事を削除することでサイトは持ち直しましたか?
片山:一時はPVが若干回復したんですが、その状態も長くは続かなかったので、今はそのまま放置していますね。5,000記事に目を通すのは大変だったんですが、すべての記事に目を通すことで、記事はきちんと読まれているか、内部リンクの貼り方は適切だったか、順位がとれている記事はどうなっているのか、テーマは広げ過ぎないことが重要など、改めて考えることができました。結果、ユーザーの検索意図を満たす利便性の高いサイトが重要だと、実体験を通してわかったのは良かったと思います。
サイト作りに大切なのは記事とサイト設計
サイトが飛んだ経験から、サイト作りで重要なのはやはり記事ですか?
片山:記事ももちろん大事ですが、サイト設計も重要だと思っています。
なるほど、順番に質問させてください。サイト設計とはどのようなことを指していますか?
片山:あるキーワードの順位を上げるためには、そのキーワードの順位を上げるために必要な記事があると思っています。Aというキーワードを上げるためには、このAというキーワードに興味のある人を集められるキーワードB,C,Dが必要で、このことをサイト設計と僕らは呼んでいます。特に、大きなキーワードはユーザーの検索意図が多いので、1記事でカバーすることは難しいです。なので、狙ったキーワードの順位を上げていくためには、ドメイン全体で、そのユーザーのためになるサイトにしていかなければいけません。
大きなキーワードだと、それだけたくさんの記事が必要になるということですね。
片山:そうです。なので始めはジャンルを絞った方がいいですね。ジャンルを絞れば、1つの記事を読んだ人が別の記事を読んでくれて、回遊しやすくなるメリットもあると思います。回遊することがSEOの直接のメリットになるというよりは、ユーザーさんが記事中のリンク先のページに飛ぶことで、そのページとその先のページの評価が上がるという推定ですね。こういった理由で、ジャンルをできるだけ絞って、小さなジャンルのトップを目指すほうがサイト全体のパフォーマンスが良いと感じているわけです。
では記事の質問に移ります。記事を作るうえで大事なことはなんでしょうか。
片山:基本的には、検索意図をどれだけ考慮できるか。それに尽きると思います。
今ではいろいろなところで検索意図という言葉を聞くようになりましたが、なかなか検索意図をつかめない人も多くいると思います。
片山:弊社では、一次情報をできるだけ加味することと、上位サイトを研究して「何が書かれているか」を外さないことを重視していますね。ただ、検索結果の1位から10位までの傾向がバラバラなケースもあるので、そうなると自分の感性を頼るしかないです(笑)。
ただ基本的には、記事を公開した後の方が大事だと思っているので、トラフィックも順位も上がらなければ、検索意図をもう1回見直して作り直しています。評価が決まるのは2週間、固まるのが1ヵ月だと見込んで、見直しのサイクルは1ヵ月おきですね。
記事の順位はGRCとかサーチコンソールを使って追っていますか?
片山:そうですね。もともと狙っていたキーワードで順位が取れているかをGRCで、トラフィックやどんなキーワードを拾っているかは、サーチコンソールを使っています。
あと抽象的な話にはなってしまうのですが、自分で読んでいて面白いかとか、見ている人が面白いと思ってくれるかも指標にしていますね。初稿が上がってきた後に、社内で何度も推敲してから記事を公開する流れです。
レベルに合わせた依頼で少数精鋭のチームをつくる
現在もライターさんに執筆を依頼しているかと思うのですが、ライターさんにはどのように検索意図を伝えていますか?
近藤:今は細かく指示書を作っていますね。何人かディレクターが社内にいるんですけど、指示書の内容はディレクターごとの裁量に任せています。
ライターさんに指示書の意図を汲んでもらうことは難しくありませんか?
近藤:難しいですね。全員一律で同じものを渡しても、当然理解力も読解力も違いますので……。ライターさんのレベルを最初に見て、その人に合わせた指示書を渡しています。それから、指示書を渡した後のコミュニケーションも重要です。指示書を見ながらZOOMなどの音声でこちらの意図を説明することで、できるだけ齟齬をなくすことを心がけています。
ライターさんと積極的にコミュニケーションをとられている姿勢が、失礼ながらとても意外でした。
近藤:あまりよそのことを聞かないので他のところ分からないんですけども、ライターさんも人間ですから。ご縁あってお手伝いいただいているので、お金で還元できるところは還元する必要がもちろんあると思うんですけど、やっぱり一緒にやっているので「みんなで頑張ろうぜ」のほうがいいかなとは(笑)
すばらしいですね。ライターさんの原稿に対するフィードバックで気を付けていることもあればお伺いしたいです。
近藤:ライターさんの人間性を認めてあげることですね。たとえば、良い記事に対してフィードバックを出すのはもちろんなのですが、「最終的にこうなったよ」という結果まで報告するなど、お金だけではない“つながり”を強められるような関わり方は意識しています。
ひとつの記事にかけるコストはかなりかかっている印象なのですが、サイトが飛んでしまう前と比べて、ライターさん1人あたりにかけるコストは増えましたか?
近藤:前よりライターさんの人数は減ってはいるのですが、全体的なコストは変わらないですね。ライターさんのレベルに合わせたお仕事だけをお願いしていると、最終的にやめていくライターさんがいるんです。言い方は悪いかもしれないですが、今は結果的に「質のいいライター」だけが残り、少数精鋭体制になっています。
ただ、コミュニケーションコスト以外に、ライターに依頼するためのリサーチコストや、初稿を推敲する修正コストなどを加味すると、1記事あたりにかかるコストは上がっています。
ありがとうございます。最後に、初心者に向けて伝えるべきことがあればお願いします。
片山:最初は何をどうしたら売れるかまったくわからないと思うのですが、まずは検索ユーザーさんの検索意図に向けて、答えを返してあげる1点だけを考えると良いと思います。その答えの中に商品やサービスがあるはずですから。
そのうえで、商品を紹介するだけでなく、読み手に楽しんでもらえる情報発信をメインに考えたほうがいい。そのほうが売り上げアップにつながりますし、作り手としても楽しみながら続けられるんじゃないかなと思いますね。