メディア運営をする上で知っておきたい法律の話
メディアを運営していくという事は、不特定多数の人に情報を発信するということです。
誤った情報や人を騙すような情報を発信してしまうと法的に罰せられる可能性もあります。
意図せずとも法に抵触してしまう場合もあるので、今回はメディア運営をする上で知っておくべき法律の話について解説していきます。
もくじ
抑えておきたいメディア運営に関係する法律とは?
メディア運営に関係する法律について解説しますが、日本の法律はとてもたくさんあります。本記事では全てを網羅することはできませんので特に気を付けたい法律について解説させていただきます。
広告表現に関する法律は、上記全体像のように、様々な観点から、法規制がなされます。
例えば、化粧品の広告記事は、薬機法だけ注意していれば済むというものではありません。
確かに、効能・効果に関する側面は薬機法に注意が必要です。
しかし、その化粧品の品質につき、根拠がないのに素晴らしいような記載をすれば、景表法違反になる可能性があります。
また、決してやってはいけませんが、他人の広告記事を真似すれば、著作権法違反の問題が生じる場合があります。
このように、色々な観点から、各種法律による規制があります。ですので、どれか一つの法律に限定せず、各種法律に違反しないように注意する必要があります。
法律の話というと難しいと思うかもしれませんが、法律に気を付けたメディア運営を一言で表すと「正しく、清く、誠実であること」だと思います。
人を騙すような記事の書き方はもちろんNGですし、人のものを盗むこともNGです。
それでは、1つずつ解説していきたいと思います。
薬機法とは?
薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
なんだか、難しい表現ですが要は以下のようなものについて規制し適正化を図るためにある法律です。
- 化粧品
- 医薬品
- 医薬部外品(薬用化粧品)
- 医療機器
など
それぞれどんなものなのか解説します。
化粧品とは
人の見た目を美しくしたり、身体を清潔にしたりするものです。
皮膚などに塗ったりするもので作用の緩和なもの。
例)基礎化粧品、バック、シャンプー、リンス、石鹸、香水、歯磨き粉など
医薬品とは
人や動物の病気や疾患の診断や治療(予防)に使用されることを目的としたものです。
機械器具などではないものを指します。
種類は以下の3つがあります。
- 一般用医薬品(第1類、第2類、第3類)
- 要指導医薬品
- 医療用医薬品
ちなみにネット販売は一般医薬品のみ取り扱うことができます。
医薬部外品(薬用化粧品)とは
効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されているものです。
一定の薬用効果を謳うことができます。
例)薬用化粧品(美白)、ブリーチ(染毛剤)、歯周病予防歯磨き粉、制汗剤など
医療機器とは
人や動物の病気や疾患の診断、治療、予防に使われるものです。
身体の構造や機能に影響を及ぼす機械器具などを指します。
種類は以下の3つがあります。
- 一般医療機器(絆創膏)
- 管理医療機器(電子体温計)
- 高度管理医療機器(カラコン)
化粧品に関する記事で注意したいこと
化粧品では広告として利用できる効果・効能の範囲が決まっています。
以下のような表現には注意が必要です。
- 効果の表現
- 安全性の保障
- 医療関係者の推薦
- 体験談
それでは、1つずつ解説していきたいと思います。
効果の表現
化粧品の効果・効能の範囲を超えた表現を行うと医薬品的な表現となり薬機法に抵触してしまう恐れがあります。
以下にNG表現を記します。
病気や症状に対する表現
アトピー、アレルギー、治癒
医薬品的な表現
治る、改善、再生、回復、復活、修復
健康でない状態への表現
肌の弱い方、肌の疲れ
機能に影響を与える表現
再生、ターンオーバー(新陳代謝)促進、抗酸化、抗炎症、コラーゲン生成、細胞活性
若返る表現
アンチエイジング、若さを保つ、老けない、衰えに負けない、加齢をストップ、昔に戻る
安全性の保障
肌は人により千差万別のため、すべての人に対して安全であるかのような表現は禁止されています。
安心・安全という表現をしてしまうと薬機法に抵触してしまう恐れがあります。
また、絶対、完璧、万全などの万能性を意味する表現もNGとなります。
NG例
- 天然成分のみなので、安心です。
- 日本製なので安全です。
- どんな肌でも大丈夫。
- 刺激が絶対におきないように無添加で作られています。
- 完璧な商品
OK例
- 天然成分のみなので、優しい使い心地です。
- 日本製なので気に入っています。
- 様々な肌に使えます。
- 刺激が気になる方の為に無添加で作られています。
- こだわりぬいた商品
医療(医薬)関係者の推薦
医療(医薬)関係者等は一般の方へ与える影響が大きいと考えられており、商品を推薦すると、効果・効能や安全性が保障されているものと誤認を与える可能性があるため、広告は行わないこととされています。
たとえ、その発言内容が事実であったとしても医療(医薬)関係者などの推薦は広告においては表現することはできません。
医療(医薬)関係者とは以下を指します。
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- 美容師(理容師)
など
NG例
- 厚生労働省認可
- 美容師愛用
- 〇〇クリニックで使われている
- 美容整形の先生がおすすめ
- 医師会推薦商品
体験談
体験談は記事にオリジナリティを持たせるために非常に重要な役割をもちます。
しかし、表現の仕方によっては薬機法に抵触してしまう可能性があるので注意が必要です。
事実であったとしても化粧品の効果・効能を超えるような表現はすることができません。
この表現とは文章のみではなく画像も該当します。
例えば、ビフォーアフターの写真を掲載してしまうと薬機法に抵触の恐れがあります。
写真を掲載するのであれば、使い方など使っているときの様子を撮るようにしましょう。
NG例
- 使用して2か月でシミが消えました
- ほうれい線が薄くなりました
- アトピーがよくなりました
- ニキビ跡が治りました
- 肌が白くなりました
化粧品を扱った広告掲載に関してはこちらの記事でも解説をしているのでご覧ください。
健康食品に関する記事で注意したいこと
健康食品は薬機法では規制されていません。
しかし、医薬品と誤認を与えるような表現を行うと薬機法に抵触する恐れがあります。
以下の4つのポイントに注意をしてみてください。
成分
医薬品専用の成分を含んでいる場合は医薬品となります。
形状
以下のような形状のものは健康食品では不可とされています。
- アンプル剤(注射器)
- 舌下錠
- 舌下に滴下するもの
用法・容量
医薬品には用法や用量が指定されています。
飲む時間や量を指定する場合は医薬品と誤認を与えます。
効果・効能
身体に変化を与えるような表現や病気や症状に良いかのような表現を行うと医薬品と誤認を与える可能性があります。
景品表示法とは?
景品表示法とは商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことを厳しく規制するためにある法律です。
また、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することで、より良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るようにする目的もあります。
つまり、景品表示法には大きく分けて以下の2つのことを規制しています。
- 不当表示の禁止(優良誤認・有利誤認・その他誤認の恐れがある表示)
- 景品類の禁止及び制限
今回は、メディア運営に関係が深い不当表示について解説します。
不当表示に気を付ける
不当表示とは言葉の通り事実と異なるような不当な表示のことを指します。
不当表示はユーザーに誤認を与えてしまう可能性があり誤認については2種類あります。
優良誤認
NG例
- 添加物が入っているのに「無添加」と表示する
- 20種類の栄養成分しかないのに「50種類の栄養成分」と表示する
- 「他の会社の2倍ビタミンC配合」とするが根拠がない
有利誤認
有利誤認とは商品の価格や取引条件について事実に反し著しく優良と誤認させる表示のことを指します。
NG例
- 「この価格はこのサイトだけ」と表示するが、他のサイトでも同じ価格で販売している
- 「セットで買うとお得」を表示するが、単品購入でも同じ価格
- 「今なら半額」と表示するが、常に同じ価格
比較広告に気を付ける
他社の商品を比較する場合は事実であり、公正でなければなりません。
またランキング等で優劣をつける場合も注意が必要です。
主観的なランキングをしてしまうと不当表示となる恐れがあります。
他社との比較を行う場合は下記を満たすようにしましょう。
- 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
- 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用していること
- 比較の方法が公正であること
著作権法とは?
著作権法とは著作物を作り出した人の権利を守る法律です。
コンテンツの見出しやツイッターのような短文が著作物に該当するか、微妙な判断をようするものもありますが、トラブル予防の観点から、他人の画像、文章その他のコンテンツのコピーは原則NGと考える方が無難です。他人の画像や文章をコピーした段階で、著作権のうちの複製権という権利の侵害となります。
トラブル防止のためにも引用はなるべくしないようにしたいところですが
記事内容によってはどうしても引用の必要性があることもあるでしょう。
どうしても引用が必要な場合は引用の条件を満たした上で引用をする必要があります。
引用の条件は文化庁の「著作権テキスト」から引用させていただきます。
⑧ 「引用」「転載」 関係
ア.「引用」(第32条第1項)
他人の主張や資料等を「引用」する場合の例外です。
【条件】
1 すでに公表されている著作物であること
2 「公正な慣行」に合致すること(例えば,引用を行う「必然性」があることや,言語の
著作物についてはカギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること。)
3 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること(例えば,引用部
分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや,引用される分量が必要最小
限度の範囲内であること)
4 「出所の明示」が必要(複製以外はその慣行があるとき)引用:文化庁著作権テキスト
引用ばかりで、独自の文章や主張等がなければ、引用に該当しないことは明らかです。
しかし、引用に該当するか否か等、著作権法違反にならない例外に該当するか否かの判断は、難しいことが多く、訴訟になることもあります。「引用」と表示すれば例外に該当し、著作権法違反にならないと安易に判断せず、権利者の承諾を得る、または権利者の利用規約等の使用許諾のルールに従うことを基本としてください。
その他、他人のサイトへのリンクを貼る行為自体は、原則として著作権法違反に該当しません。しかし、他人のサイトのコンテンツが違法にアップロードされたものと知りながらリンクを貼ったような場合は、例外的に著作権法違反になり得る等、著作権法違反かどうか複雑で、問題となり易いので注意をお願いします。
個人情報保護法とは?
個人情報保護法とは個人情報の取り扱いに関連する法律です。
メディア運営において一見、個人情報は扱わないように思えますが注意が必要なのはお問合せフォームです。
お問合せフォームからは様々な人からのメールが届きますが取得したメールアドレスも、個人を特定できる場合は立派な個人情報です。近年では、個人情報に対する意識に注目が集まっているため、トラブル防止のためにもプライバシーポリシーページを用意して個人情報の取り扱いについて記載しておくといいでしょう。
プライバシーポリシーページを用意していれば安心というわけでもなく取得した個人情報は漏洩しないよう、PCにはセキュリティソフトを導入するなど責任をもって取得した個人情報を管理するようにしましょう。
商標法とは?
商標法とは商標権に関して権利を保護するための規律を設けた法律です。
商標権とは知的財産権の1つで商品やサービスのマークやネーミングなど、その商品のトレードマークのようなものです。
例えば、そのマークを見たらこの会社の商品だなと分かるようなものですね。
この商標法で気を付けるべきところはメディアを立ち上げる際にロゴやサイト名を真似ししたがために、他者の商標権を侵害してしまうと損害賠償を求められたりする場合があるので注意が必要です。
ある会社・団体の名称・ロゴが入ったサイトをコピーしただけで、商標権侵害のクレームが入るケースがありますので、これら社名やロゴ等の使用は慎重にした方がいいです。
不正競争防止法とは?
不正競争防止法とは、事業者の営業上の利益、公正な競争秩序を保護することを目的とした法律です。不正な手段を用いて、他の事業者の営業上の利益を侵害した場合、侵害した者に対する損害賠償請求等が認められることがあります。
例えば、広告主のサイトと見間違えるようなサイトを立ち上げて収益をあげるようなことをすると広告主企業から損害賠償を請求されたり、そのサイトの使用差し止め請求がなされる場合があります。この場合、不正競争防止法違反のみならず、不正な手段の内容によっては、独占禁止法違反、広告主サイトの本文と類似していれば著作権法違反、ロゴ等が類似していれば、商標法違反等、同時に、他の法律に違反する可能性もあります。
最後に
今回はメディア運営をするにあたって知っておきたい法律について解説をしました。
薬機法などの表現に関しては明確な定義が無く、各都道府県により判断されます。
使い方や記事全体の構成によって、異なる意味に捉えられる場合もあるため、本記事で解説した情報が100%法令の範囲内であると保証することはできません。
しっかりと自身でメディア運営に必要な法律に関する知識を身に着けて、健全なメディア運営を心掛けましょう!