近年、注目が高まっているファンベースマーケティング。顧客やファンとの絆を深めながら、意見を取り入れたり、共に作り上げることで売上アップや認知拡大に繋げるマーケティングです。
企業がSNS活用やユーザーとのコミュニケーションを積極的に行っている昨今、成長のカギをファンが握っていると感じる方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、ファンベースマーケティングの基本から、成功事例や具体的な手法までをご紹介します。
ファンベースマーケティングの基本情報
ファンベースマーケティングとは
ファンベースマーケティングとは、ファンを大切にし、実際にファンの声を聞き、意見を取り入れながら行うマーケティングのことを言います。
ファンの意見や感想に耳を傾けることで、よりユーザー心理を理解した製品・サービスへの改善に繋がり、新たなユーザーやファンの増加に繋がります。また、実際に自分たちの声が反映されることで、ファンはよりコアなファンになるでしょう。
これは当然のように思えますが、今、ファンベースマーケティングについて改めて学び、実践することが特に重要なのです。
その理由として、近年SNSはもちろんライブ配信なども一般化し、リアルな声を不特定多数に向けて発信する人たちが増えたことが挙げられます。企業にとっては、ユーザーの本音を拾いやすくなったと言えます。そのため、多くの企業が製品・サービスにユーザーの声を取り入れ製品改善に繋げています。
ユーザーに寄り添う企業が増えているからこそ、逆にユーザーの声を聞かずに製品・サービスを展開し成長することは困難になりつつあります。コアユーザーであるファンと共にファンベースマーケティングを実践することで、いっそう信頼関係が高まり、長く深く愛される企業として発展できるのです。
一般的なマーケティングとの違い
通常、マーケティングやウェブマーケティングにおいて最重視されるのは、定量的なデータです。
どのような属性のユーザーが、どのような商品を、どのような検討ステップを踏んで購入に至ったかを分析することから、マーケティングが始まります。数値を元にした分析は、マーケティングの定石です。
一方で、ファンベースマーケティングは定性的です。ファンの生の声を聞き取り、それを反映します。そもそも一般的に「ファン」とは、顧客の中でも一部の熱狂的なユーザーを指すため、定量的とは言いがたいものなのです。
大多数のユーザーと少数のコアなファンでは、購買動機に違いがあるかもしれませんが、母数が小さいファンの声の方が、より貴重であるケースは少なくありません。例えば、1度だけ購入したユーザー1000人と、10回リピートしているファン100人では、購入回数は同じですが、今後を考えればどちらの方がより多くの売上を見込めそうでしょうか。このように考えると、ファンの価値の高さが見えてきます。
ファンベースマーケティングは、ファンマーケティングと名称が似ていますが、基本的には別のものです。主に目的に違いがあります。
ファンマーケティングは「ファンをターゲットとして、ファンに買ってもらうこと」を目的とするものです。一方、ファンベースマーケティングは「ファンの声を聴くことでよりよい製品・サービスの開発やそれらを届ける方法を模索すること」が目的です。
ファンベースマーケティング実践の4つのステップ
実際にファンベースマーケティングを行うには、何をすればいいのでしょうか。大まかに4つのステップがあります。
1.ファンの定義を分析する
まずは、自社における「ファンの定義」を分析しましょう。製品・サービスを何度、何種類、どれくらいの期間、購入してくれているのかによってユーザーを分けます。
例えば、以下のように分けることができます。
- 自社の商品やサービスを購入したことがある
- 自社の商品やサービスをリピートして使っている
- 自社の商品やサービスを信頼し愛用している(ファン)
- 自社自体を信頼し愛用している(コアファン)
ファンベースマーケティングにおいては、ファンやコアファンの声に耳を傾けます。どれくらいの回数や種類を購入すれば「愛用している」と言えるのかは、企業ごとにさまざまです。会員制度を持つ企業なら会員のみを分析すれば十分という場合もあるでしょう。ぜひ、マーケティングや営業に関わる担当者でディスカッションしてみてください。
2.ファンの声をリサーチし、活用する
ファンベースマーケティングの初歩的な方法として、SNSでのリサーチによって、自社の商品・サービスに関する投稿から生の声を拾っていくというものがあります。
SNSには良い話題だけでなく悪い話題も投稿されている可能性があるため、すべてを聞き入れるのは困難です。だからこそ、前述の分析が大切なのです。
ファンやコアファンの属性を分析し、同じようなタイプの人々の声を有効活用しましょう。また、ファンやコアファンの方々の顧客名簿などにSNSアカウントが掲載されている場合は、直接リサーチに訪れるのもよいでしょう。
SNSで口コミ投稿を見つけたら、Likeボタンを押したり、返信をするなど、反応することがおすすめです。積極的にコミュニケーションを取る姿勢を見せることで、ファンも心を開きやすくなります。口コミ投稿に対する反応の効果については、「口コミマーケティングの効果とは?事例・実践方法も紹介!」をご覧ください。
SNSの膨大な投稿の中から自社に関する投稿を探すのが難しい場合は、ファンへのアンケートを実施して直接声を拾っていきましょう。いただいているメールアドレスや住所宛にアンケートを送付したり、企業によってはファンの方に電話で直接ヒアリングすることもあります。
3.ファンの声を元に作る・ファンと共に作る
一方的に自社に関する意見や情報をリサーチするのではなく、ファンと相互にコミュニケーションを取り、ファンと共に作ることこそが、ファンベースマーケティングの真髄です。そのためには、企業側から接触する機会を創出しましょう。
オンラインでは、SNS・配信・コミュニティ(オンラインサロン)の運営などでのコミュニケーションが有効です。オフラインでは、リアルに接することができるイベント・交流会の実施がおすすめです。ファンと共に作るためのきっかけや土台作りには、さまざまな種類があります。詳しくは記事内「ファンベースマーケティングの具体的な方法は?」で解説します。
ファンとの対話から改善された製品や、ファンの意見を100%取り入れて生まれたサービスなどが大ヒットすることも珍しくありません。
4.ファン化を加速させる
新たにファンになってくれる人たちとの出会いや、ファンとまでは言わずともすでにユーザーである人たちがファンになれるような施策も大切です。
後述しますが、SNSと組み合わせたキャンペーンや口コミなどによってファン化を加速させることができます。ユーザー数のみならずファン数を増やすことに尽力することが、長く深く愛される企業となっていく大切な要素です。
ファンベースマーケティングの成功事例3選
では、実際にファンベースマーケティングが成功している事例を見てみましょう。ここでは、ワークマン・丸亀製麺、アットコスメについてご紹介します。
ワークマン:ファンが作った製品は売上40億円
作業着・安全靴・アウトドア・スポーツ・レインウェアなどを展開するワークマンは、アンバサダーという制度を作ってファンとのエンゲージメントを高め、大幅な売上増に成功しています。
ここで言うアンバサダーとは、企業の大使を務める=企業が任命したコアなユーザーを指します。多くの場合、商品・サービスに関する情報配信や交流会などに、積極参加してもらうことを条件としています。
アンバサダー制度を取り入れる企業は多いですが、なかでもワークマンではアンバサダーの意見を非常に多く取り入れています。例えば、すべてをアンバサダーとともに作ったキャンプギア商品は、年間40億円以上の売上を誇ります。
ワークマンのアンバサダー制度成功ポイントの1つとして、専用のWEBページで公式アンバサダーのSNSを紹介していることが挙げられます。ワークマンの公式サイトに掲載されることで、ワークマンの製品を活用したキャンプやスポーツの様子を積極的に更新してくれる効果が期待されます。
引用元:株式会社ワークマン WORKMAN/ワークマンプラス公式アンバサダーご紹介!(参照 2023-10-10)
出典元:ダイヤモンド・オンライン 【ワークマン仕掛け人の告白】アンバサダーの意見を100%丸呑みしてキャンプ用品をつくったら大成功した理由 | ワークマン式「しない経営」(参照 2023-10-10)
丸亀製麺:顧客体験価値ランキング1位
国内はもちろん、海外でも人気のうどん専門飲食店である丸亀製麺。実はSNS活用に優れている企業としてマーケティング業界でも有名です。
特にX(旧Twitter)のフォロワーは100万人を超えています。丸亀製麺の投稿をリツイートすることで500円割引のクーポンを配布するなど、フォロワーが参加できるキャンペーンを次々に展開しました。
他にも公式アカウントがユーザーの投稿をリツイートしたり、ファンの投稿にマッチしそうなハッシュタグを公式自らが作成したりと、ファンに近い存在として運営されています。
ファンニーズを的確に捉え、YouTubeのドラマ制作や人気YouTuberとのコラボレーションを実施したり、Instagramでインフルエンサーを起用したPRを行うなど、SNSごとの特性や流行に合わせた施策を展開しています。
その結果、「2022年顧客体験価値ランキング」(インターブランドジャパンが運営するC Spaceが調査・発表)では、トップとなりました。
出典元:インスタラボ Twitterのフォロワー数100万人超! 丸亀製麺のSNS・キャンペーン戦略をご紹介!(参照 2023-10-10)
日経クロストレンド 顧客体験価値ランキング首位は「丸亀製麺」 体験価値の5要素が鍵(参照 2023-10-10)
アットコスメ:毎週6,000人以上がライブ配信視聴
コスメ・美容情報の総合サイトアットコスメは、ライブ配信でファンベースマーケティングに成功している貴重な事例です。
アットコスメが実施しているのは、ライブ配信をしながら商品を紹介し、その場で購入してもらうことができる「ライブコマース」と呼ばれるものです。近年日本でも一般化しつつあります。
アットコスメは、2022年以降「教えて!美容部員さん ライブショッピング」というシリーズで毎週配信イベントを行っており、毎回の平均視聴者数は6,000名以上にのぼります。
配信では、一方的に商品の魅力を発信するのではなく、視聴者からの質問コメントにその場で答えたり、ユーザーの声を拾いながら使用方法やケア方法を発信しています。ファンの声を聞き入れながら展開しており、まさにファンベースマーケティングを体現した配信です。
引用元:株式会社アイスタイル 教えて!美容部員さんライブショッピング(参照 2023-10-10)
ファンベースマーケティングの具体的な方法は?
では、ファンベースマーケティングを行うには、どうすればよいのでしょうか。
ファンベースマーケティングに活用したいツールや施策と、どのように実践すればよいのかをご紹介します。
SNSを活用する
SNSを活用したファンベースマーケティングは、フォロワーとのやりとりから始まります。
自社アカウントへのコメントに対してはもちろん、フォロワーによる自社製品やサービスについての投稿を見つけたら、Likeや返信をしましょう。
反応を返すことで、ユーザーから「声を届けやすい企業だ」という印象を持ってもらえます。すると、より意見を伝えてもらいやすくなり、それらの意見を商品やサービスに反映させることができます。
SNSというオープンな場で信頼関係を構築することで、このあとご紹介するコミュニティやアンバサダー制度の運営も視野に入れることができます。
イベント・交流会を活用する
SNSで投稿された意見も貴重ですが、実際の声をオフラインでヒアリングできる場としてはイベントが有効です。
新作発表会などのリリースイベントもよいのですが、ファンベースマーケティングにおいては、印象に残る体験型のイベントや相互にコミュニケーションが取れる交流会の実施がおすすめです。
交流会はファンミーティングとも呼ばれ、食事を楽しみながら座談会を行ったり、新製品を試してもらいながら意見を聞いたりと、ラフな雰囲気で行われるものが多い傾向にあります。
堅苦しくない場だからこそ伝えてもらいやすいことがあり、親密感が増すためより根強いファンになってもらえる貴重な場です。参加者同士が話している中からリアルな声をヒアリングできるため、アイデアや改善の種が多く見つかるでしょう。
イベント開催の会場手配が大変という場合や、進行役が必要なケースなどはイベント制作会社に相談してみましょう。
配信を活用する
イベントや交流会をリアルで行う場合、場所の手配や人員の配置など相応のコストが必要です。しかし、配信であれば、最低限のスタッフと機材で行うことができます。
視聴者としても自宅などから気軽に参加できるため負担が少なく、ハードルが低いことが利点です。スタッフが顔を出して配信することで親近感が演出できます。ユーザーの顔は企業に見えずコメントのみで参加できるので、リアルな声をもらいやすいこともメリットです。
コスメやファッションアイテムを取り扱う企業では、1度の配信で何万個も売れるという例もあります。スタート時は視聴者が数十名だとしても、しっかりコミュニケーションをとり、密にやりとりをしてコツコツ信頼を重ねることで参加者は増えていきます。
コミュニティ(オンラインサロン)を活用する
コミュニティとは、SNSのようなオープンな場ではなく一部のメンバーだけが参加するオンライン上のクローズドな場です。オンラインサロンと呼ばれることもあります。有料で運営している企業が多く、有料で会員になるほどコアなファンが集まるという意味で非常に貴重です。
会員とのやりとりには、Facebookのグループ機能などを活用する企業もあれば、オンラインサロン運営専門のサービスを利用する企業もあります。多くの場合、メンバーが自由に投稿できるスレッドがあったり、オンライン交流会が毎週で定期開催されています。
有料会員制の場合はもちろん、無料の場合であっても、会員登録済みのファンのみが相手となるため、企業側もより相手を信頼できることが大きなメリットです。
例えば、コミュニティメンバーに商品開発に関わってもらい、新製品を一緒に作り上げることで、より需要の高いものが作れるでしょう。また、自分たちが作った製品やサービスが発売されれば、メンバーはさらにコアなファンになっていく効果も見込めます。
アンバサダーを活用する
アンバサダー制度を作れば、コミュニティやオンラインサロンほどのリソースをかけずにコアなファンの声を取り入れられます。
前述のワークマンの事例のように、ファンの中から大使的な存在を厳選し、アンバサダーを認定します。自分がアンバサダーになったということを紹介する人も多いので、さらなる波及効果が期待できます。
SNSや顧客リストからアンバサダーを募集したり、オンライン上のリサーチによってアンバサダーになって欲しいファンを見つけてコンタクトをとったり、集め方はさまざまです。
ファンを増やす施策も並行することが大切
ここまでは具体的なファンベースマーケティングの手法をご紹介しました。しかし、SNSやコミュニティを運営し始めたとしても、すぐにファンが集まるわけではありません。また、すでにユーザーである人たちにファンになってもらう施策も必要です。だからこそ、ファンを増やすための活動を続けることが大切です。
ファンを増やす施策としては、SNSと組み合わせたキャンペーンやアフィリエイト広告の活用が有効です。
SNSキャンペーンは瞬発力があり、一気にファンを増やせる可能性を秘めています。しかし、フロー型の性質から、一時は盛り上がっても投稿が流れてしまう懸念点もあります。
一方で、アフィリエイト広告はメディアが運営するWEBサイトなどに紹介してもらえることが特徴であり、ストック型で徐々にメディア掲載網が広がります。長期型の施策なので、ファンベースマーケティングとも親和性が高いでしょう。
まとめ
ファンベースマーケティングはファンありきのマーケティングです。そのため、長期的な積立型の手法だと言えます。まずは地道なファン作りから始めましょう。
中でも親和性の高いアフィリエイト広告は、ファンから新たなファンへと認知が広がった際のさまざまな検索ニーズを満たします。ファンはよりファンに、ユーザーもファンになり、気になっているという段階の人もファンになる、そんな環境を作ることができます。
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