マーケティングの仕事をしていると【D2C】という言葉を耳にします。しかし、マーケティングの経験が浅い方は「D2Cってなに?ECとは違うの?」と感じる方もいるでしょう。
しかし、D2CとECは異なる意味を持つので、誤った理解をしていると、マーケティング業務で大きな失敗をしてしまう可能性が高いです。そのため、マーケティングの仕事をしている方は、D2Cの意味や使い方を理解する必要があります。
本記事では、D2Cの意味やECとの違い、D2Cの成功事例や失敗事例を紹介します。また、記事の後半では【D2Cで結果を出すコツ】についても解説しています。
「マーケティング業務で失敗したくない…」と考える方や、「仕事を覚えて会社に貢献したい!」と考える方は、ぜひ参考にしてください。
D2CとECの違いは?
まずは、D2CとECの違いについて解説します。D2CとECには「インターネットを使って商品を販売する」という同じ意味がありますが、細かい意味は異なります。
ここでは、D2CとECの意味を理解と、正しく活用する方法を理解しましょう。
D2Cとは
D2Cとは、Direct-to-Consumerの略語であり、メーカーが中間流通を介さず、自社のECサイトなどを通じ、商品を直接消費者に販売するビジネスのことを意味します。
例えば、あなたがハンドメイドでアクセサリーを作り、代理店を使用せず顧客に販売した場合は、D2Cとなります。
また「販売者のブランドを売る」という点もD2Cの特徴です。
ECモールのようなプラットフォーム上で商品を販売するだけでは、ブランドの思いや理念を伝えるのは難しい側面があります。しかし、顧客とより密にコミュニケーションを取れるD2Cでは、商品の機能性だけではなく、ブランドの付加価値を提供することが可能です。
D2Cという言葉を聞くと難しく感じるかもしれませんが、「消費者に直接届けるビジネスモデル」と理解しておけば問題ありません
ECとは
ECは、Electronic Commerceの略語であり、電子商取引を意味します。簡潔にいうと、インターネット上で商品やサービスを提供する方法がECに該当します。
D2Cとの厳密な違いは【ECは販路を意味する】ということです。
顧客はインターネットを通じて商品やサービスを注文し、支払いも同様にインターネット経由で行います。具体的には、Amazon・楽天・YahooなどのECモールや、D2Cのような自社ECサイトからの販売もECに含まれます。つまり「実店舗を使用せず、インターネット上で契約や販売、決済などを行うこと」がECを指します。
消費者に商品やサービスを届ける、という点においては、D2Cと共通しています。D2Cは直販型のビジネスモデルを意味しており、ECは販路を意味しています。
D2Cを活用する具体的なメリット3選
D2Cが近年注目されている理由は、様々なメリットがあるからです。ここでは、D2Cを活用する具体的なメリットについて解説します。
自社の売上貢献や経費削減にも繋がるので、理解しておきましょう。
D2Cを活用するメリットは、大きく分けて以下の3つです。
- ファンを作りやすい
- データ分析が簡単
- 収益率が高い
それぞれ順番に解説します。
ファンを作りやすい
自社のファンを作りやすいことは、D2Cの大きなメリットといえます。
消費者と直接コミュニケーションが取れるD2Cは、顧客のフィードバックを直接受け取ることが可能です。そのため、顧客のニーズに応じた商品開発やマーケティング戦略を作れます。顧客の要望に答えることでファンが多くなり、長期的な売り上げを期待できます。
自社の世界観を正しく提供できると、ブランド構築にも繋がります。
データ分析が簡単
マーケティングや商品開発戦略の改善のための顧客データ収集が容易であることも、D2Cの魅力です。
D2Cの本質は、楽天やAmazonなどのECモールで顧客に商品を販売するのではなく、企業が消費者の購入完了までのプロセスを自作できることにあります。自社でECサイトを運営していれば、顧客の属性やニーズ、ECサイトの滞在時間など、様々な分析が簡単にできます。
自社の問題点を効率的に発見できるのは、D2Cの魅力といえるでしょう。
収益率が高い
D2Cの最大の魅力は、コスト削減による収益率の増加です。中間代理店を利用しないので、マージンなどのコストが発生しません。
また、コストの削減と顧客との直接のコミュニケーションから、顧客満足度の向上や収益の増加が期待できます。
ビジネスの原則である【低コストで高い利益を出す】に近いD2Cを正しく活用すれば、会社に大きく貢献することが可能です。
D2Cにはデメリットも存在する
様々なメリットがあるD2Cには、デメリットも存在します。顧客のファン化や高い収益率だけを期待してD2Cを始めた結果、失敗した企業は少なくありません。
マーケティングで成果を出すためにも、D2Cのデメリットは必ず理解しておきましょう。D2Cのデメリットは、以下の通りです。
- 初期コストが発生する
- 収益化まで時間が必要
- 在庫リスクの可能性がある
デメリットを理解すると正しい使い方が見えてきます。順番に見ていきましょう。
初期コストが発生する
D2Cを始めるには、多くの場合コストがかかります。ECサイトを作る場合、場合によっては100万円以上の初期投資が必要です。商品の配送料やサーバ代など、ランニングコストが発生するのも、D2Cのデメリットといえるでしょう。
またECサイト運営はもちろん問い合わせ対応など、人的コストが必要になるのもD2Cのデメリットと考えられます。
収益化まで時間が必要
D2Cを始めたからといって、収益がすぐ発生する事例は少ないです。なぜなら、認知の獲得に時間を要するからです。
Amazonや楽天などのECモールを活用すれば、認知を広げる期間は短縮できるでしょう。しかし、自社のECサイトを利用する場合、広告戦略から考える必要があります。
そのため、D2Cで商品を販売するとなっても、収益化までには時間がかかる可能性があります。
在庫リスクの可能性がある
D2Cの最大のデメリットは、在庫リスクの可能性が高いことです。自社の商品が人気を獲得できない場合、膨大な在庫を抱える結果になります。
そのため、D2Cを始める場合は顧客ニーズの分析を徹底する必要があります。
国内・海外のD2C成功事例を紹介
ここでは、国内・海外のD2C成功事例を紹介します。
国内の成功事例
まずは、国内での成功事例を紹介します。
BULK HOMME
BULK HOMMEは、メンズ化粧品を販売している企業です。YouTubeやInstagramなどのSNSを活用した広告マーケティングに成功し、多くの人気を集めています。
SNSから自社サイトに集客したビジネスモデルや、WEB広告を活用したマーケティングで認知拡大から成功に至りました。
男性の美容ニーズに応えた商品が数多くあり、海外展開にも積極的に取り組んでいます。
BASE FOOD
BASE FOODは、1日分に必要な栄養素が含まれている食品を提供するブランドです。
「健康的な食品を低価格で欲しい」という消費者ニーズを汲み取ったサイト構築が功をなし、多くのファン獲得に成功しています。
従来のパンやパスタとは異なり、ビタミン・ミネラル・タンパク質・食物繊維などの必要な栄養素をバランスよく含んでいるのがBASE FOODの特徴です。
海外の成功事例
次に、海外での成功事例を紹介します。
Casper
Casperは、アメリカを中心にマットレスをオンラインで販売している企業です。
高品質なマットレスを手軽に購入できることから、創業から6年で上場に成功しています。「マットレスの売り込みを避けて、消費者が自由に商品を試せる」という点から、絶大な人気を集めました。
代理店を仲介せず販売しているため、消費者は商品をスムーズに受け取ることが可能です。また、最短即日で商品を届けられることからも、多くの消費者から支持を集めています。
Warby Parker
Warby Parkerは、眼鏡やサングラス、アイウェアアクセサリーをデザイン・販売している米国のアイウェア企業です。
メガネ5本を無料で試着できるサービスを提供しており「どれが一番似合う?#warbyhometryon」という投稿がSNSで人気を集めました。
また【Buy a Pair, Give a Pair(メガネを1本購入するごとにメガネを必要としている人に1本寄付する)】という仕組みを掲げており、多くのユーザーから人気がある企業です。
D2Cで失敗する事例の特徴
前述では、D2Cの成功事例を紹介しました。しかし、先にも紹介した通り、D2Cを採用して失敗する事例も数多くあります。
ここでは、D2Cで失敗する事例の特徴について解説します。
ビジネスにおいて大切なのは「失敗確率を下げること」です。マーケティングで結果を出すためにも、必ず理解しておきましょう。
D2Cで失敗する事例の特徴は、以下の通りです。
- 市場調査をしない
- 膨大な広告費を投下する
順番に解説します。
市場調査をしない
D2Cで失敗する大きな原因は、市場調査をしないことです。消費者のニーズを分析せず「こんな商品があったらいいと思う!」という段階で商品開発に進む事例は、非常に多いです。
また、顧客の要望に応え切れず、失敗する企業も少なくありません。D2Cを採用する場合は、徹底した市場調査が必要になるのです。
膨大な広告費を投下する
認知拡大のために膨大な広告費を使う企業は非常に多いです。広告にコストをかけると、多くの認知は獲得できますが、実際に注文やお問い合わせに繋がらなければ出稿継続は難しいでしょう。D2Cで長く成果を出すには、顧客のリファラル(口コミや紹介)が必要です。口コミを増やしたい場合はインフルエンサーへの依頼やアフィリエイト広告などを活用するとよいでしょう。
D2C導入に必要なもの
生産場所・物流経路の確保
サービスを配信する展開方法ならともかく、商品を販売する形態のブランドである限り、まず生産工場と商品配送方法の確保は欠かせません。
生産工場であれば実際に足を運べる距離にあることが理想です。
D2Cのブランドとしてこだわりを再現するには逐次細かな打合せや実物の確認作業が発生するでしょうし、スタートアップ時であれば大規模な発注ではなくどちらかといえば小規模な生産ロットになるはずです。
ブランドを支えてもらう柱のうちの一つとして長い付き合いをしていくには信頼関係の構築が不可欠です。そういった事情も考慮すると緊急事態にも対応できる位置関係にあったほうがお互いに安心した取引を実現できます。
また、もし自社にノウハウがすでにあるのであれば、販売経路は自社のみで完結できることが理想です。ただ、そうでない場合は物流の知識を一から学び、さらに物流管理業務のフローを社内で割り振る必要があります。特に配送の段階では支払や届先、さらには個人情報管理など絶対にミスが許されない事項が山ほど発生します。
もし時間的なコストや人的リソースが限られている場合、別途外注することも念頭に置くと社内の仕組みづくりに柔軟性が出るかもしれません。
信頼が置けるアドバイザー
情報だけ取り込んで「はいスタート」といって首尾よくできるほど物事は簡単ではありません。もしD2Cとしての相性が完璧だったとしても実践情報なしで成功する確率はおそらくとても低いでしょう。何か新しいことを始める際には何事にも水先案内人となる師匠が必要です。
そのためにも導入の際には、立ち上げようとしているブランドには何が必要か、いま行おうとしている計画の方針は間違っていないかなど、困ったときに相談できるアドバイザーを付けることが非常に好ましいです。
D2Cに精通した信頼できるアドバイザーが傍らに居れば百人力なのは勿論のこと、運営にあたり悩みを一人で抱え込むことが無くなりますし、その縁から別の人脈が繋がる可能性もあるので、将来の事業の幅を広げるためにも頼れる存在を見つけておきましょう。
初期集客方法
様々スタートを切る準備をしたのち、最後はユーザーへ商品情報をお届けするための集客方法を検討することが事業を導入する前の最後の準備段階です。
D2Cを軌道に乗せるための一つのハードルは初期の集客です。
当然のことながら事業をスタートした段階ではユーザーは誰も自社のブランドを知り得ません。始めてから宣伝開始するのでは事業に掛かるランニングコストと効果が現れる時期のタイムラグ等を考えると現実的ではないでしょう。
そのためブランドの世界観とブランドイメージに合うターゲティングを設定すると同時に、どのような形態の広告配信を行うかなど事前のマーケティング戦略についてもきっちりと見据えておくことが非常に大切になります。
昨今では様々な広告形態があり、利用する広告によっては顕在層から潜在層まで訴求できるものや、あるいはブランド認知拡散か新規集客かなど目的により手法をコントロールできるものも存在しています。フォーマットもマス広告からWEB広告まで選択肢はいくらでもあります。
それぞれ得意な面・不得意な面、一長一短があるため、広告事情に詳しい方に相談してみるのも一つの手でしょう。
またより具体的な内容として、別途D2Cの成功事例についての記事も用意していますので、興味があればご一読ください。
D2Cを成功させるコツ
D2Cで失敗する原因を理解したものの、成功させるコツも知りたいと考える方は多いでしょう。ここからは、D2Cを成功させるコツについて解説します。
失敗する確率を下げたうえで、成功確率を高めていきましょう。
D2Cを成功させるコツは、主に以下の3つが考えられます。
- 顧客との信頼関係を作る
- 商品の質にこだわる
- 世界観を作る
順番に見ていきましょう。
顧客と信頼関係を作る
顧客の要望に応えることで、信頼できる企業となるでしょう。消費者から信頼を得るためには、質の良い商品はもちろん、徹底したサポートを提供したり、フィードバックを真摯に受け止めたりなどが必要です。
D2Cを採用する場合は、顧客に寄り添ったサービスを意識しましょう。
商品の質にこだわる
D2Cを採用するうえで大切なのは、商品の質です。どれだけ魅力的なECサイトを作成しても、商品の質が悪い場合、消費者は離れていきます。
多くの消費者に満足される商品を提供できれば売上にも繋がり、商品の改良や事業拡大も期待できます。マーケティングは重要ですが、消費者に喜んでもらえる商品開発を行う必要があります。
世界観を作る
D2Cにおける世界観とは、会社のブランドストーリーや、消費者に提供したい思いを演出することです。
具体的には、文章のライティングやECサイトのデザイン、サービス内容などが挙げられます。ストーリーをもとに世界観を作れると、消費者がファンになってくれる可能性は高くなります。
そのため、自社ブランドの世界観やストーリーは整理しておきましょう。
なお、D2Cにとって重要なブランドストーリーの作り方は下記の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ:D2Cを活用して自社の売上を伸ばそう!
D2Cの魅力について、理解していただけたでしょうか。D2Cは、中間マージンなどの削減ができるうえ、顧客と信頼関係を築き上げるビジネスモデルです。上手に活用できれば、自社の売上がアップするのはもちろん、多くの消費者がファンになってくれます。
ただし、自分達が作りたい商品だけを販売したり、膨大な広告費を使うだけでは、D2Cはうまく機能しません。顧客のニーズをしっかり汲み取り「消費者を豊かにする」という考え方を意識したうえで、D2Cに取り組んでいただければと思います。
なお、A8.netでは【D2Cの成功確率を高める資料】を無料で提供しています。
D2Cをより詳しく理解したい方はもちろん、「会社のためになる情報が欲しい!」と考える方は、ぜひ活用してください。