サブスクリプション(subscription)、通称「サブスク」とは、直訳すると「定期購読」「会費」という意味であり、商品やサービスを定額で提供し、その契約の期間内に連続的に収益を得るビジネスモデル。
ビジネスモデルとして現在勢いのあるサブスクですが、その中でも特に注目すべきは「サブスク2.0」というコンセプトです。
すべての定額会員サービスを一つの「サブスク」という概念で捉えてしまいがちですが、実際にはサブスクの形態は時代の変化に応じて整備・改良されています。
本コラムではサブスクの中でも「2.0」という概念を中心に置き、様々なジャンルのサブスクビジネス設計について事例を挙げつつご紹介していきたいと思います。
サブスク2.0とは
サブスク2.0を中心に議論を始めるために、まずはこの語の定義を確認していきましょう。
サブスク2.0の定義
今回のメインテーマである「サブスク2.0」が概してどのようなサービス体系を持っているのかという点に着目すると、その特徴は以下のようにまとめることができます。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- サービスのアップデートと商品交換の自由度
- 有料会員向けの特別サービス
サブスク2.0ではユーザーの選択や所有から使用という部分に視点が置かれたうえでサービス設計されるケースが多いです。
それぞれ見ていきましょう。
アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
サブスクでは会員数の増加がビジネスの柱となります。会員数を増やすにはサービスの提供価値水準を担保しつつ、間口を広く取る必要があります。
そのためにはプランの選択肢が豊富であることが第一条件であり、サブスク2.0ではグレードを数段階に分けたアップセル可能なプランを用意できることが理想です。
そのうえで定額会員料の収益だけではなく、単品販売やオプション品などでクロスセルの可能性を拡げることで、ニーズの隙間を埋めてユーザビリティを向上させると同時に利益源のチャネルを増やし事業継続の安定性を図ることができます。
サービスのアップデートと商品交換の自由度
定額制とはいえ同じ内容のサービスを提供し続けるのではユーザーの継続率も次第に下がってしまうことでしょう。
サブスク2.0に含まれる多くの企業では、定期的なサービス内容のアップデートや、あるいはユーザー希望ベースでの商品・サービスの交換を受け付けておくことで、期待感を持たせマンネリ化を防止でき、解約率(チャーンレート)を低減させることができます。
有料会員向けの特別サービス
サブスク2.0の枠組みでは有料会員だけが享受できる特別感も重視されます。
会員となった際に単品購入のECでは受け取れない特典、キャンペーンへの参加、会員限定で利用可能なサポート機能などで充実したサービスを目指していくこともユーザーの満足度を向上させるための太い柱となります。
サブスクのジェネレーション
通信技術におけるジェネレーションのように「2.0」と銘打たれていますが、サブスクにはサービス形態の特徴に応じて2.0の他にも「1.0」と「3.0」というステージ区分を設けることができます。
サブスク1.0とは
サブスク1.0の特徴は以下の通りとなります。
- サービスを分割で購入するような形式の定額制
- 契約時点でのサービス内容を継続する
- 通常購入と比べて初期購入金額を抑えられる
ネーミングから前世代的な古い形態のように感じるかもしれませんがそうではなく、現在もこのモデルで流通しているサービスは多いです。
2.0との違いとしては、1.0では初期購入金額を抑えることが出来ることが特徴です。
サブスク1.0として一番想像しやすい形態は、何十年と続く配達型のビジネスである新聞定期購読など、月極でユーザーの属性を選ばず均質の商品・サービスが送付されてくるものです。
サブスク3.0とは
サブスク3.0の特徴は以下の通りとなります。
- AIをはじめとしたテクノロジーを活用するサービス
- ユーザーへの徹底的なパーソナル化とニーズの先取り
- プラットフォーム化されたデジタルもしくはIoTサービス
こちらは2.0よりも近年に現れた形態のサブスクサービスです。
2.0との違いとしては、新技術をサービスに取り入れユーザーのニーズ発掘を自動化できるようなシステムを採用していることが特徴です。
サブスク3.0としては「b.glen(ビーグレン)」というスキンケア・コスメのサービスを提供する事例として挙げられます。
b.glenではAI診断を採用してスキンケア分析を行い肌トラブルの悩みに応じた解決策をとなるコスメやケア方法を提案しています。
このサービスでは顔写真とアンケートを通じて各個人に適した定期購入セットを提案してもらえるため、ケア方法に迷いのあるユーザーに対して潜在的なニーズを汲み上げることのできるサービスとなっています。
サブスク2.0 事例
実際にどのようなサブスク2.0で展開されているのか、先に挙げた3要件、
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- サービスのアップデートと商品交換の自由度
- 有料会員向けの特別サービス
を基準に具体的な事例について見ていきましょう。
例1)旬の食材を定期便:らでぃっしゅぼーや
定期便にて農産・畜産・水産・加工品問わず各シーズン旬の食材を届ける「らでぃっしゅぼーや」です。
先述したサブスク2.0のモデルの定義を以下に当てはめると、らでぃっしゅぼーやのサービス設計は以下の通りとなります。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- セレクトサービス・ぱれっと・おいしい定期便と3コースのプラン
単品販売がある
食材以外に生活用品も購入可能 - サービスのアップデートと商品交換の自由度
- 旬の食材が入れ替わる
セット内容ごとに食材が変化
自分で配達サイクル食材の数量・種類のカスタムも可能 - 有料会員向けの特別サービス
- 商品登録サービスで選んだ食材がずっと3%OFFで購入可能
- サイト
URL - https://www.radishbo-ya.co.jp/shop/
例2)会員制ビール配送サービス:DREAM BEER
家庭用本格ビールサーバー会員制で銘柄が100以上のクラフトビール配送サービスのサブスク「DREAM BEER」です。
先述したサブスク2.0のモデルの定義を以下に当てはめてみると、DREAM BEERのサービス設計は以下の通りとなります。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- 銘柄組み合わせ自由
定期購入のプランはおまかせ・セレクト・都度購入の3形態
プランはいつでも選択変更可能
配送本数は2~4本の間で選択できる - サービスのアップデートと商品交換の自由度
- サイトにはいつも新登場の銘柄が控えている
銘柄はセレクトプランで指定可能 - 有料会員向けの特別サービス
- 専用ダブルタップビールサーバーの無料レンタル
- サイト
URL - https://dreambeer.jp/
例3)大人女性向けファッションレンタル:airCloset
プロがセレクトしたコーディネートが配送されてくるレディースファッションレンタルのサブスクです。
先述したサブスク2.0のモデルの定義を以下に当てはめてみると、airClosetのサービス設計は以下の通りとなります。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- レギュラー・ライト・ライトプラスの3プランが選択可能
レンタルしたアイテムを購入可能
オプションサービスとしてレンタル枠拡張・アクセサリー・自由レンタル枠を設けている - サービスのアップデートと商品交換の自由度
- 初回のファッションタイプ診断・毎月の感想をもとにセレクトされるアイテムが変化する
各プランの上限に応じてアイテム交換可能 - 有料会員向けの特別サービス
- 洋服に付されたアイテムラベルが確認可能でそのアイテムの性質・スタイル・レビューなどを知ることができる
- サイト
URL - https://www.air-closet.com/
例4)知育おもちゃのサブスク:Cha Cha Cha
お子様の月齢・性格・個性に応じてセレクトされた6~7点の知育おもちゃをレンタルできるサブスクです。
先述したサブスク2.0のモデルの定義を以下に当てはめてみると、Cha Cha Chaのサービス設計は以下の通りとなります。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- 基本プラン・学研ステイフル慣習プラン・特別支援教育プラン・法人向けプランの4形態が用意されている
気に入ったおもちゃの買取も可能 - サービスのアップデートと商品交換の自由度
- お子様に合ったおもちゃを教育現場のプロが随時選定
2ヵ月に1回おもちゃの交換が可能
おもちゃの交換の有無・買取も選択可能 - 有料会員向けの特別サービス
- 有名育児インスタグラマーコラボキャンペーンなど開催中
- サイト
URL - https://chachacha-toy.com/
例5)愛車をサブスクリプション:KINTO
月々定額でマイカーを導入できるサブスクサービス「KINTO」です。
先述したサブスク2.0のモデルの定義を以下に当てはめてみると、KINTOのサービス設計は以下の通りとなります。
- アップセル・クロスセルなど料金プランの選択肢
- 支払いシミュレーションでスタイル・予算に合った車をセレクト可能
充実したオプションの選択肢 - サービスのアップデートと商品交換の自由度
- 順次車種・モデルのラインナップ追加
契約途中での乗り換え可能 - 有料会員向けの特別サービス
- 専用・特別仕様車のラインナップの用意
無料キャンペーンや最新情報 - サイト
URL - https://kinto-jp.com/
まとめ
いかがでしたでしょうか?
サブスク2.0のフレームワークは理解できたでしょうか?
従来のビジネス上で提供していたサービスに、選択の幅や物品のシェア化に焦点を当てることで自社の特有の価値をユーザーに提供するサブスクのモデル、それが「サブスク2.0」です。
サブスクビジネスで大切なのは自社にマッチしたモデルを選択できるかという点です。文中でも「3.0」のモデルを紹介していましたが、新しければ新しいほど良いというわけではありません。これからもサブスクビジネスの動向を逐一確認しつつ潮流を掴めるように継続した情報収集で、常に競合の一歩先を行く動きを取り続けましょう!
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