製品やサービスには必ず、『製品ライフサイクル』というものがあります。
通常、製品やサービスは、開発・製造し、売り出して購入されるようになり、徐々に衰退していきます。そのようなサイクルを捉え、適切な時期に適切なマーケティング施策を行うことで、売上や利益の最大化につながります。
今回は、製品ライフサイクルの基本情報や判別方法、それぞれどのような対策をすべきか解説します。
これから新しい商品を開発する方や、自社サービスについて取るべき策がわからなくなってきた方は、ぜひ参考にしてください。
製品ライフサイクルとは
製品ライフサイクル(プロダクト・ライフサイクル)とは、製品が市場に展開されてから、衰退し購入できなくなるまでのプロセスを指します。つまり、ユーザーが製品を購入できる期間全体ということです。
製品ライフサイクルには、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つの時期があります。
マーケティングにおいては、製品ライフサイクルをマップ化し、自社がいまどのフェーズにいるのか、いつどのフェーズに移るのか、観測や予測をしながら製品やサービスを展開することが重要です。
製品ライフサイクルのマップを参照しながら、理想的なターゲット像を設定しましょう。そのうえで製品の価格帯やパッケージデザインを決定し、広告を含むマーケティング戦略をプランニング・実行することで、売上向上につながります。
一般的には、製品が市場に展開されてから衰退するまでの売上高や利益は次の図のように推移します。
出典元:野村総合研究所(NRI)『プロダクト・ライフサイクル | 用語解説 | 』(参照 2024-05-10)の画像をもとに作成
製品ライフサイクルを活用するメリット
製品ライフサイクルを活用するメリットは、以下の3つがあります。
時期に応じた最適なマーケティングができる
自社の製品が、市場において、いまどのような位置にあるのかを把握できれば、最適なマーケティングを行うことができます。
詳しくは、このあとコラム内「製品ライフサイクルの各段階で有効なマーケティング戦略」でご説明します。
売上や利益の増加が見込める
最適なマーケティングができるということは、リーチすべきターゲットに届けられるということです。
時期によって、リーチすべきターゲットは異なります。製品やサービスを求めている人、または潜在的にニーズを持つ人にきちんと届けば、売上や利益は確実に増加します。
コストが削減できる
自社の製品やサービスにとって、その時々においてやるべき施策がわかっていれば、お金や時間のムダを省くことができます。やらなくてもよい施策への投資を抑え、適正なコスト配分が期待できます。
製品ライフサイクルにおける4段階の特徴
まずは、製品ライフサイクルにおける4つの段階について、それぞれの時期の特徴や考えるべきことをご紹介します。
導入期
導入期は、製品が市場に展開される時期、つまりユーザーに製品を知ってもらう時期です。製品をつくる開発期を含んで考える場合もあります。
まだ初期段階であり、一般に認知されていない状態であるため、需要が少なく売上も低いのが導入期によくある状況です。
これから市場を創出する必要があるため、製品の詳細やメリットをしっかりと打ち出し、なるべく多くの方に届ける施策を行うべき時期といえます。
有名な企業から売り出される製品や、開発期からの告知に成功しているサービスであれば、発売してすぐに売り切れることもあります。
成長期
成長期は、製品がユーザーに認知され、需要と売上が増加していく時期です。製品について打ち出すべき訴求点は導入期とは変わり、よりブランド力重視になっていきます。
成長するにつれて同業他社の参入も増え、各企業が強みを活かしたサービスや製品を開発しはじめます。そのため、成長が本格化するにつれ、状況はめまぐるしく変化します。変化に応じて柔軟にマーケティングや販売戦略を微調整する必要があります。ブランド価値をさらに高め、他社製品との優位性を訴求することが大切です。
また、製品に対するユーザーのニーズも多様化していきます。新規ユーザーに対するアプローチのみならず、既存ユーザーとのエンゲージメントを強めることも重要です。
成熟期
成熟期は、需要と供給のバランスが整い、売上が安定する時期です。成長期に比べると、売上の伸びはゆるやかになるでしょう。
安定的に購入されるようになるため、収益性が高く、製造コストは下がる傾向にあります。しかし、なにもしなくても売れつづけるというわけではありません。成熟期をいかに長く保つかによって、1つの製品が企業にもたらす利益が大きく変わるため、安定的に売上をキープする企業努力が不可欠です。
成長期には多くの類似製品が市場に生み出されているため、飽和期ともいえます。そのため、ブランド力が最も重要な時期となります。また、これまでのデータを活かしながらパフォーマンスを上げることが大切です。
衰退期
衰退期は、売上が減少していく時期です。基本的には、どんな製品であっても、ライフサイクルには最終段階が訪れると考えておいたほうがよいでしょう。ほとんどの製品は、時を経て、なくなったり、旧式のものから新しいものへと移り変わるものです。
ただし、急激に人気や売上が落ちてしまうと大きな打撃となるため、なるべく緩やかな下降となるよう、企業努力が必要です。また、どんなに計画していても急に需要が減ってしまうこともあると踏まえ、早いうちから新バージョンや新製品を準備しておくことも大切です。
自社の製品ライフサイクル段階の判別方法
製品ライフサイクルにおいて、自社がいまどの段階にいるのかをマップ化することが重要であるということは、すでにお伝えしました。
しかし、自社がどの段階にいるのかを判断することは、容易ではありません。なぜなら、各段階に明確なラインがあるわけではなく、製品の種類・業界・時流などによって大きく異なるうえに、各社の売上の増減は、さまざまな要因で変動するからです。
そうはいっても、参考にしたい指標はあります。例えば、売上高の成長率を踏まえたうえでプロダクトごとの成長率を確認することです。
1.売上高の成長率を把握する
まずは、会社全体の成長率を算出し、会社がいまどのライフサイクルの段階にいるのかを知ることが、製品ライフサイクルをうまく捉えるポイントです。
例えば、そもそも会社の売上が上がっていて企業自体にファンがいる状態で新製品を出すと、市場全体の動きや人々のニーズに関係なく売れてしまうことがあります。このようなケースでは、製品ごとの成長率だけを把握しても、製品自体のライフサイクルをつかむことができません。
会社全体の成長率を導き出す計算式は、次のようになります。
- 計算方法
- 売上成長率(%)=(当期売上高ー前期売上高)÷前期売上高×100
決算書など、正確な売上高が把握できるものを活用しましょう。短い期間では正確な傾向を把握することが難しいため、5期分以上を目安に比較できるとよいでしょう。
立ち上げたばかりの会社で5期分の売上高を比較することができない場合は、月ごとで比較したり、同じ業種業態で上場している企業の売上傾向を参考にするのもおすすめです。
2.製品ごとの成長率を確認して見極める
製品ごとの成長率は、製品ライフサイクルを見極めるうえで最も指標にしやすい数値です。
計算式は、会社全体の売上成長率を導き出した式と同じく、次のようになります。
- 計算方法
- 製品の売上成長率(%)=(製品の当期売上高ー製品の前期売上高)÷製品の前期売上高×100
会計データや販売データを活用して算出し、前後の期でどのくらい上下しているのか、比較しましょう。売上高の成長率を踏まえたうえで、なるべく適切に現在地を把握したいところです。
現状を見極め、段階ごとの対策をしつつ、常に次の時期に対して備えることが、継続的な企業成長のポイントです。
製品ライフサイクルの各段階で有効なマーケティング戦略
それでは、製品ライフサイクルの各段階において、企業はどのようなマーケティング戦略を実施すべきなのでしょうか。
注力すべき施策について、ご説明します。
導入期でとるべき戦略
多くの場合、導入期はまだ世間に製品が認知されていない時期といえます。そのため、認知拡大に積極的に投資すべきです。広告・宣伝・プレスリリースなどによって、より多くの人に知ってもらい、興味をもらい、製品の価値を理解してもらうための戦略が重要です。
この時期にユーザーとなりやすいのは、イノベーターと呼ばれる、新しいものが好きな層です。製品によってターゲットやペルソナは異なりますが、まずはイノベーター層に届ける施策を重視するとよいでしょう。
市場調査によってユーザーニーズを把握し、成長期以降に備えましょう。
成長期でとるべき戦略
人気が高まり一気に売れていく時期である成長期は、ブームに乗ろうとして同じような製品やサービスを後発する企業が増えていきます。そのため、差別化はもちろん、販路拡大や製造体制の整備に力を入れるべきです。
また、ブランディングを確立することも重要です。
この時期は、ターゲットを絞りすぎず、マスつまり不特定多数に向けて伝えるほうが効果的です。具体的には、テレビCMや電車の広告など、あらゆる世代が何気なく目に止める場所での訴求などが効果的です。WEB広告やSNS広告も欠かせません。
成熟期でとるべき戦略
ユーザーが持つ本質的な課題を見極め、すでに顧客となっている既存ユーザーの維持に注力すべきなのが、成熟期です。例えば、ブランディングの強化が、製品やサービスを使いつづける動機につながります。
また、クーポンや割引サービスの提供などで、関連製品を購入しやすくするのも効果的でしょう。該当製品はもちろん、企業やブランドに対する愛着を醸成することで持続的な利用も期待できます。
成熟期は、成長期よりも需要が減り、プッシュ型のマーケティング施策は利益率が低くなる傾向にあります。そのため、広告費を削減し、プル型のマーケティングや販売促進を行うことがポイントです。
具体的には、オウンドメディアやSNSの投稿などを通じて、ユーザーにとって有益な情報を定期的に提供し、最終的にお問い合わせに導きましょう。さらに、少しずつ新たなユーザーのニーズを創り出したり、いざ欲しいと思った方から選ばれるような中長期的な施策に力を入れることが大切です。
衰退期でとるべき戦略
衰退期には、市場からの需要が減少し、売上が立たなくなっていきます。そのため、撤退するのか、イノベーションを起こして新バージョンを生み出すかを検討する時期となります。
ただし、衰退期に市場から撤退することによって、時代の流れによって売れなくなってしまった製品としてマイナスイメージがついてしまうリスクがあります。そのため、同じ製品の新バージョンをつくらない場合でも、新しい別の製品をあえてこの時期にリリースするなど、うまくシフトしていきましょう。
市場の原理として、どのような製品にも基本的には終わりがくるものです。衰退期は、広告や宣伝をしたとしても売れなくなる時期であると理解し、無理に販売促進する手立てをとらないことも、重要な経営判断といえます。
マーケティングや販売促進に、いつまでどの程度の投資をしつづけるのか、慎重に見極めましょう。
すべての段階で効果的なマーケティング施策
ここまでは、それぞれの時期に合わせた施策を確認してきましたが、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つの段階すべてにおいて、効果的なマーケティング施策もあります。製品ライフサイクル全体で効果的な施策には、主に2つの種類があります。
ロングテールで成果が出る施策
1つめは、ロングテールで成果が出るもの、つまり継続することで中長期的に成果につながるものです。例えば、オウンドメディアやブログ、SNS、メールマーケティングなどがあります。
オウンドメディアやブログの活用は、検索エンジンへの最適化が不可欠です。定期的に更新をしなければ検索されても上位に表示されず、情報を探しているユーザーに届けることができません。上位に表示されるには、記事の本数や更新頻度などさまざまな要因があるため、中長期的な施策として続けることが重要です。
また、SNSについても、アカウントをつくればすぐにフォロワーが増えるわけではありません。さらに、フォロワーが増えたとしても、継続して更新されなければフォロワーは離れていってしまいます。これは、メールマガジンの登録者についても、同じです。継続して運用しましょう。
ストック型の施策
2つめは、ストック型、つまり先々にも残っていく施策です。例えば、オウンドメディアやブログ、アフィリエイト広告、自社アプリなどがあります。
オウンドメディアやブログの記事は、半永久的に検索エンジンのデータベースに残ります。製品ライフサイクルが終わっても歴史として残っていく施策は、いずれブランドや企業を支えるものになっていきます。
同じ理由で、アフィリエイト広告の活用は非常におすすめです。WEB広告の多くは出稿期間が終了すれば、ユーザーに届くことはありません。しかし、アフィリエイト広告の場合は比較サイトやブログの記事に掲載されることで、半永久的に残っていく可能性があります。
自社アプリも、一度ダウンロードされればアンインストールされるまでは利用を期待することができます。内容を充実させるほど離れるユーザーは少なく、長く使ってもらえるでしょう。
これらは、製品ライフサイクル全体を通して、企業が存続する限り継続したい施策です。
まとめ
製品ライフサイクルを意識したマーケティング戦略の重要性について、ご理解いただけましたでしょうか。自社製品がどの段階にあるのか、確実に見分けることは容易なことではありませんが、予測しながら適切な施策を行うことで、売上につながっていきます。
まずは、どの段階においても有効なSNS運用や、アフィリエイト広告などからはじめるのがおすすめです。これらは、オウンドメディアやブログをゼロから立ち上げるよりも素早く成果につながりやすいといえます。
アフィリエイト広告については詳しい資料もご用意していますので、ぜひお役立てください。