WEBマーケティングにはさまざまな手法がありますが、なかでも長い間活用され続けているのがメールを使ったマーケティングです。
メールマーケティングの前身とも言えるメールマガジンは、50年以上も前から使われています。メールを活用したマーケティングは、それだけ多くのノウハウが蓄積されている、大変有効な施策です。
今回は、長期的な成果が期待できるメールマーケティングについて、基礎知識やはじめ方から、設定すべきKPIや成功のコツなど、幅広く解説します。
メールマーケティングの基礎知識
まずは、メールマーケティングとは何か、メルマガとの違いにも触れながらお伝えします。
メールマーケティングとは?
メールマーケティングは、メールで顧客とコミュニケーションを取ることにより見込み顧客の育成や売上アップなど、設定した目標を達成するためのマーケティング手法です。
1度きりのお知らせメールなどではなく、適切なタイミングで継続的なコミュニケーションを取ることによる目標達成を目指します。
顧客リストをいくつかのグループに分け、各顧客グループに合わせた内容を配信するのが特徴です。継続して有意義な情報を届けることで、ユーザーからの信頼を高めたり、商品やサービスへのより深い理解を促したり、別の製品の購入に繋げることでクロスセルやアップセルを実現します。
メールマガジン(メルマガ)との違い
メルマガとメールマーケティングとは、異なるものです。メルマガは古くからある企業の販売促進ツールであり、メールマーケティングの前身と言えます。
基本的にメルマガは、決まった曜日や時間に受信者全員に向けて同じ内容を配信するものです。
一方、メールマーケティングは、ユーザーの属性に合わせてメールの内容やタイミングを変えて配信します。
メールマーケティングのほうが見込み顧客のグループ分け(セグメント)や分析に時間がかかるほか、配信内容を複数考えなければならないなどのデメリットもありますが、ユーザーにより受け入れられやすく、成果に繋がりやすいのが大きなメリットです。
メールマーケティングの4つのメリット
ここからは、メールマーケティングのメリットをご紹介します。
- 低コストではじめられる
- 開封率やクリック率が高い
- ターゲットを絞ってアプローチできる
- 営業効率があがる
順番に解説します。
低コストではじめられる
メールマーケティングは比較的、低コストではじめられるマーケティング施策だと言えます。例えば、WEB広告を利用しようと思えば、必ず出稿料が発生します。バナー広告や動画広告を出すのであれば、運用費に加えてデザインや動画制作にもコストがかかります。
しかし、メールなら文章さえあれば完結させることができます。もちろんHTMLメールのほうが効果的な場合もありますが、最低限、文章作成の人件費があればはじめることができるのです。
開封率やクリック率が高い
メールマーケティングは、メールというツールを活用しているからこそ開封率やクリック率が高いのが、大きな魅力です。
メールではなく、検索エンジンやWEB広告から自社のページを開いてもらうとすると、ユーザーにとってアウェイの場所で接点を持つことになります。
しかし、メールは個人が自ら取得したメールアドレスに届くものであり、クローズドでプライベートな場所と言えます。そのため距離が近く、開封率が高くなるのです。
また、同じ理由でクリック率も高くなります。何度もお役立ち情報をメールで送っているユーザーであればなおさら、送信者への信頼が高まっているためクリック率はあがる傾向にあります。
ターゲットを絞ってアプローチできる
メールマーケティングのメリットは、見込み顧客の行動や関心に合わせたメールを配信できるところにもあります。
例えば、年齢・性別・住んでいる地域などに分けて内容を変更しましょう。また、資料ダウンロードをしてくれたユーザーに対しては次の日にお礼と近々開催するイベントのお知らせを送る、商品Aを購入してくれたユーザーに対しては商品Bのお知らせを送るなど、ユーザーに合わせた効果的なアプローチを行うことができます。
どのようなターゲットにどんな内容を送るべきかについては、このあと本記事内の「メールマーケティングの種類」でも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
コミュニケーションを重ね、信頼が深まり、最もユーザーの関心が高まったタイミングでコンバージョンを促すことができるため、成果に繋がりやすいのです。
営業効率があがる
営業活動を行うには、直接交渉に伺う必要があります。リモート会議であっても人的リソースが必要です。そのため、すべての見込み顧客を完璧にフォローするのは難しい場合も少なくありません。
その点を補えるのが、メールマーケティングです。メールによって信頼関係を築いていき、いざ購入意欲が高まったところで営業に伺うなど、メールマーケティングは実際に会えなくても営業効率アップに寄与する手法なのです。
メールマーケティングで設定すべきKPI
メールマーケティングに欠かせないのが、KPIの設定です。何のために実施するのかを明確にしましょう。
企業であるからには、売上アップが最終的なゴールであるはずです。売上をアップするには、さまざまな方法があります。1つの方法がメールマーケティングです。
例えば、全社的に売上を月1000万円アップするというゴールがあるとします。そのうち、メールマーケティングで実現するべき金額が100万円だとします。このような具体的で大きな目標のことをKGIと言います。
また、100万円を達成するために必要な手段と、その手段によって達成すべき数値目標のことをKPIと言います。
メールマーケティングにおいては、次のような項目についてKPIを設定するとよいでしょう。
- 見込み顧客の育成
- 購入や申し込み
- クロスセルやアップセル
- エンゲージメント強化
KPIについては、『ECサイトのKPI、何をどう設定すべき?基礎から改善策まで解説』のコラムで詳しく解説しています。
見込み顧客の育成(エンゲージメント強化)
見込み顧客の育成は、メールマーケティングが最も得意とするところです。継続的にユーザーに役立つ情報発信を続けることで、同じ業界のまったく接点のない商品よりも、何度かメールで情報を受け取った企業の商品を購入する確率が高くなります。これは、単純接触効果と言われる心理学的な現象です。
また、BtoBにおいては、せっかく名刺交換をしたとしても、そのあと相手と接触できていないケースも少なくありません。メールマーケティングを活用することで、まずは複数の接点をつくり、親密度をあげていくこと(エンゲージメント強化)ができるのです。
KPIとしては、顧客リスト数の増加率・開封率・クリック率などを指標として設定するとよいでしょう。
購入や申し込み
購入や導入は、メールマーケティングにおいて最も重要なKPIと言えます。売上アップに直接貢献するものだからです。
KPIとしては、メール内の申し込みリンクや購入ボタンのクリック率、メールからECサイトなどへの移行したあとは購入率・リピート購入率・顧客単価などを設定にしましょう。
クロスセルやアップセル
1度または1件の購入や導入だけでなく、クロスセルやアップセルをKPIとすることも重要です。
クロスセルとは、1つのものだけでなく関連性の高いものを一緒に販売することを言います。例えば、スマートフォンを購入するユーザーにスマホケースも売ることなどがこれにあたります。
アップセルとは、顧客が最初に検討したものより高値なものを販売することを言います。例えば、130GBのスマートフォンを買おうと思っていたユーザーに、それよりも価格の高い250GBのスマートフォンを売ることなどがこれにあたります。
KPIとしては、メール内での関連製品のクリック率、メールからECサイトなどへの移行したあとは申し込みや購入の販売数・誘導バナーなどのクリック率・顧客単価などを設定しましょう。
主なメールマーケティング手法5選
メールマーケティングには、いくつかの種類があります。どれを選ぶべきかは、自社のフェーズ・適性・リソース・コストを踏まえて検討しましょう。ここでは、5つの種類をご紹介します。
ステップメール
ユーザーと自社との関係性に応じて、複数のステップに分けてメールを送るのが、ステップメールです。ステップを踏むように、少しずつユーザーとの距離を縮めていくイメージを持って設計します。
例えば、WEBサイトのアクセス解析ツールを、販売しているとします。資料請求をしたユーザーに対するステップメールとして、次のような内容を順番に送っていくと効果的です。
- 資料請求ありがとうございました+アクセス解析の重要性
- WEBサイトの効果的な運用法+アクセス解析を取り入れた成功法
- 自社の解析ツールによるWEBサイト改善成功事例+10日間の無料体験版
- もっと詳しい使い方+体験版を有効に活用するコツ
- WEBサイトのPDCAのコツ+成功事例
- 手厚いサポートサービスについて+有料版3日以内の登録で1か月目半額の案内
リターゲティングメール
ユーザーの行動によって送り分けるメールのことをリターゲティングメールと言います。ある商品のページを見たユーザーに対してのみキャンペーンメールを送るなど、特定の行動を取ったユーザーにアプローチします。
特にECサイトを運営している場合、カートに商品を入れたまま放置しているユーザーに購入を促すメールを送ることは非常に重要です。また、解約ページを訪れたユーザーへの解約防止メールとしても機能します。
例えば、次のような内容を検討してみましょう。
- 商品の購入を忘れていませんか?
- 商品について理解が深まる情報
- サービスをもっと楽しむことができる情報
- おすすめの関連商品
- 購入者の声や体験談
- 数日以内の購入で割引キャンペーン
セグメントメール
ユーザーを分類し、それぞれに合わせた内容を送るのがセグメントメールです。
例えば、東京都の20代女性・郊外に住む40代男性・子育て中のお母さん30代などで分類します。さらに趣味趣向を分析し、健康志向・アウトドア好き・語学学習への意欲が高いなど、自社製品との相性を考えながら項目を分けましょう。
配信対象者の属性や興味関心に合わせた内容のメールを送ることで、開封率やクリック率が高くなるのがセグメントメールの特徴です。ただし、配信する対象ユーザーが限られるため、各メールの配信数は少なくなります。配信数とメール作成の人的コストのバランスを見極める必要があります。
シナリオメール
ステップメールとリターゲティングメールを組み合わせたような、ユーザーの行動に応じて、次に送るステップを変更するのがシナリオメールです。
例えば、ユーザーがメールAを開封したらメールBを次の日に送り、開封しなければメールCを1週間後に送るなど、分岐点をつくり複数のシナリオを準備しておきます。
メール本文を複数作成したり、細かな設定をするためにリソースは大きくかかりますが、より個々のユーザーの状況に合った内容を送れるため、コンバージョンや解約防止の成功率は非常に高くなります。
休眠発掘メール
以前にメールを送ったことがあるものの、コミュニケーションが途絶えてしまっているユーザーに対して送るメールを、休眠発掘メールと言います。
もともと自社の製品やサービスと接点があったユーザーなので、また興味を持ってもらえる可能性があります。何年前のユーザー情報であっても、メールマーケティングを行う際には実施しましょう。
開封やクリックなど反応があれば、上記で紹介したメールマーケティングの仕組みに切り替えましょう。
メールマーケティングのはじめ方
実際にメールマーケティングをはじめるには、どのような手順で進めればよいのでしょうか。一般的なステップをご紹介します。
1.KGI・KPIを設定する
まずは、KGIとKPIの設定が欠かせません。メールマーケティングに限らず、マーケティング施策を行う際は、必ずはじめに設定しましょう。
月々または数か月間における、メールマーケティングによる売上・資料請求数・お問い合わせ数などゴール(KGI)を設定し、それらを達成するためのステップとしてのKPIを設定していきます。
配信リストの数・開封率・クリック率・コンバージョン率はもちろん、さらにそれを達成するための配信頻度・解析の頻度なども設定するとより成果がでやすくなります。
2.シナリオ設計をする
目標達成までのストーリーを描く、シナリオ設計も欠かせません。配信すべきコンテンツや適切なタイミングを設計していきます。
どのユーザーに、どのような内容を・いつ・どのタイミングで送るのか、またその次は、どんな内容を・いつ・どのタイミングで送るのか…と設計していきます。
そのときにどんなアクションが想定されるのか、アクションAがあった場合はメールAを、アクションBがあったらメールBを送るなど、シナリオをつくりましょう。
シナリオづくりにはさまざまなマーケティング手法において活用されているカスタマージャーニーという考え方が役立ちます。カスタマージャーニーを意識すれば、シナリオは描きやすくなります。ぜひカスタマージャーニーについての記事も参考にしてください。
また、効果的なシナリオ設計のためには、ユーザーの特徴やペルソナを把握することが重要です。
3.リストを準備する
メールマーケティングには、リストの準備が必要です。リストとは、配信対象者一覧のことです。これまで資料請求や購入をしたユーザーはもちろん、名刺交換をしただけの方々であっても、自社との親和性が高そうであればリスト化しましょう。
シナリオ設計と前後しても構いませんし、さまざまな部署に見込み顧客の情報がある場合は、ここまでの手順と同時進行で集めておくのもおすすめです。
4.メールを作成する
配信リストが完成したら、実際にメール本文を作成していきます。
どの種類のメールマーケティングを行うかによって、つくるべき内容は異なりますが、各ターゲットごとに、役立ち、喜んでもらえて、かつKPIを達成できるような内容にしていきましょう。
最初に送るメールとしては、次のようなトピックがよいでしょう。
- 購入した製品やサービスの活用法
- ダウンロード資料に関連する役立つ情報
- お役立ち情報
- キャンペーンのお知らせ
- 類似商品の紹介
資料請求や購入をしたユーザーへのメールであれば、お礼の文章を忘れずに記載してください。
5.メールを配信する
メール本文が完成したら、実際に配信します。
Gmailなどの一般的なメールサービスを活用する場合は、必ずBCCにメールアドレスを設定し、個人情報の漏洩を防ぎましょう。また、大人数宛の場合は配信が遅延するリスクもあるので注意が必要です。
メールマーケティングでは大量にメールを送信することになるため、ミスをなくし、個人情報の漏洩を防ぐためには、メール配信システムの利用をおすすめします。メール配信システムなら、配信リストを整理したり、セグメント管理をしたり、分析・解析をすることもできるため導入メリットは大きいと言えます。
6.効果測定をする
メールを配信したら、必ず効果測定をしましょう。マーケティングにはPDCA(Plan、Do、Check、Action)が欠かせません。効果測定は、さらなる成果に繋げるための大切な工程です。
メールマーケティングの効果測定においてチェックしたい指標と計算式を、いくつかご紹介します。
- 開封率
メールを開封したユーザーの割合
計算式:開封された数÷配信成功数×100- クリック率
配信数に対して、URLがクリックされた割合
計算式:URLがクリックされた数÷配信成功数×100- 反応率
開封者数に対して、URLがクリックされた割合
計算式:URLがクリックされた数÷開封数×100- 不達率
メールが届かなかった割合
計算式:エラー数÷配信リスト数×100- 購読解除率
ユーザーが配信停止をした割合
計算式:配信停止をしたユーザー数÷配信成功数×100
また、メールから遷移したWEBサイトにおいても、購入率やリピート購入率など「メールマーケティングで設定するべきKPI」でお伝えした指標をチェックし、WEBマーケティング全体で連携がとれるとよりよいのではないでしょうか。
7.配信結果をもとに、改善する
効果検証をしたら、配信後の分析結果をもとに改善策をプランニングしていきます。
例えば、開封率が低いなら、配信する時間や曜日または件名を改善するというのが考えられます。開封はされているのにクリック数が少ないのであれば、メールの構成や内容を見直すべきだと言えます。
まとめ
メールマーケティングは、はじめやすいだけでなく、成果を追求してこだわりぬくこともできる奥の深いマーケティング手法です。企業のフェーズに合わせて長く活用し続けられ、長期的な成果が見込めるため、とにかくはじめてみるのがおすすめです。
メールマーケティングのシナリオ設計に通じるのが、マーケティング全般で重視されている、カスタマージャーニーです。
カスタマージャーニーについてはA8.netが提供する「顧客の行動や心理・感情を理解する カスタマージャーニーの描き方」で、詳しく解説しています。ぜひメールマーケティングのシナリオ設計の際にお役立てください。
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