新商品やサービスをリリースする前には、『ユーザーテスト』を行う企業がしばしば見られます。
一方で、テストの具体的なやり方や実施する時期などがわからず、悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、ユーザーテストの実施方法やポイント、注意点などについて解説します。ユーザーテストの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ユーザーテストとは
ユーザーテストは、製品やサービスを実際のエンドユーザーに使用してもらい、商品やサービスを評価するプロセスを指します。
顧客満足度を確認する方法としてスタートアップから大手企業なども採用しており、製品の初期段階で有益なフィードバックを受け取れることが特徴です。
ユーザーテストとユーザビリティテストの違い
ユーザーテストと近い言葉として、ユーザビリティテストが挙げられます。しかし双方には重要な違いが存在します。
ユーザビリティテストは製品の使いやすさに焦点を当てており、製品の初期開発段階で導入することが一般的です。
一方で、ユーザーテストは製品の使いやすさだけではなく、ユーザーの全体的な体験を重視しています。使いにくかった点や理解が難しかった点も含め、ユーザーがどう感じるかを調査することが、ユーザーテストなのです。
ユーザーテストの中にユーザビリティは含まれますが、両者の意味は異なることを理解しておきましょう。
ユーザーテストが企業にとって重要な理由
ここからは、企業にとってユーザーテストが重要な理由を見ていきましょう。一般的には下記の3つが考えられます。
- 本リリース前に試せる
- 課題や強みの発見につながる
- ユーザー心理の理解
順番に見ていきましょう。
本リリース前に試せる
ユーザーテストを行う最大の利点の一つは、本リリース前に製品の使用感をテストできることです。開発プロセス中では見つからなかったエラーや問題点を早期に発見することで、品質の高い製品をリリースできるようになるでしょう。
製品リリース後の修正や改修は再発注などのコストもかさみ、ユーザーからの信頼を失う可能性もあります。そのようなリスクを事前に回避しておけば、より効率的な販売につながります。
課題や強みの発見につながる
製品の課題や強みの発見につながることも、ユーザーテストのメリットです。
ユーザーテストでは体験者から直接フィードバックを得られるため、どの部分が改善が必要か、どの部分が競合よりも優れているか理解できます。第三者目線からの意見によって、自社では気付かない特徴も発見できるかもしれません。
ユーザーテストは改善点だけではなく、自社のUSP(競合性優位)を発見することにも役立ちます。
ユーザー心理の理解
ユーザーテストは、単に製品の機能性を評価するだけではなく、ユーザーの心理や行動の理解にも役立ちます。
例えば食品を販売する際、味のバリエーションが豊富なことはメリットに感じやすいですが、場合によっては多すぎて選びにくい場合もあります。ユーザーがどのように使用しているか、どのような感情を抱いているかを観察することでより深いニーズを理解できるでしょう。
顧客理解を行うことで製品の機能だけではなく、最適なテキストやデザインなどを分析することも可能です。商品や製品を長く愛用してもらうためにも、ユーザーテストが活用できるでしょう。
ユーザーテストを実施すべきタイミング
ここからは、ユーザーテストを行うタイミングについて解説します。製品や目的によって異なりますが、下記のタイミングで実施してみるとよいでしょう。
- 新商品・新サービスの開発時
- 既存商品のリニューアル時
- 新商品・新サービスのリリース前
順番に見ていきましょう。
新商品・新サービスの開発時
新しい商品やサービスを開発する際、ユーザーテストは非常に大切です。
開発の初期段階でユーザーテストを行うことで、ユーザーと自社製品のコンセプトが合致しているかや、開発の方向性を確認できることは、ユーザーテストを行うメリットといえます。
早い段階で製品改善ができれば、製品の品質をさらに高めた状態でリリースを迎えられるほか、開発期間の短縮も期待できます。
既存商品のリニューアル時
既に市場に出ている商品やサービスのリニューアルにも、ユーザーテストは非常に役立ちます。
既存顧客からフィードバックを得ることで、一定期間利用している顧客ならではの改善点を見つけられるかもしれません。また顧客の意見を反映して製品をブラッシュアップすることで、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。したがって商品やサービスなどを大幅リニューアルする際は、ユーザーテストを行う絶好のタイミングといえます。
新商品・新サービスのリリース前
新しい商品やサービスを市場に投入する直前のユーザーテストは、製品の最終チェックとして有効です。
この段階でのユーザーテストでは、リリースする商品やサービスの市場の適合性を判断して、最終的な改善点を見つけることが目的です。
またユーザーテストで得たポジティブなフィードバックを口コミとして利用する企業もしばしば見られます。リリースしてから高い評価を受けるためにも、製品の最終確認としてユーザーテストを行ってみてください。
ユーザーテストの具体的な実施方法
ユーザーテストの意味や実施するタイミングは理解できたものの、「ユーザーテストの実施手順がわからない」と悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、ユーザーテストの実施方法を解説します。
- ユーザーテストの目的を明確にする
- ターゲットの選定
- テスト方法の検討
- 対象ユーザーの募集
- ユーザーテストの開始
- ユーザーテストの振り返りを行う
順番に解説します。
1.ユーザーテストの目的を明確にする
ユーザーテストを行う際は、テストの目的を明確にしましょう。
ユーザーテストを実施するタイミングによって、目的は異なります。例えば、商品の開発初期段階でユーザーテストを実施する場合、市場や顧客のニーズを理解することが目的となります。一方でリリース前のユーザーテストでは、問題やトラブルなどの最終確認、ユーザーニーズへの適性などを判断することが一般的です。
また、事前に仮説を立てておくことも重要です。
「〇〇な悩みを解決したい」「〇〇を楽にしたい」などの仮説を立てることで、ユーザーテストで確認すべき要素や課題が見つけやすくなります。
2.ターゲットの選定
目的を明確にしたら、ユーザーテストを受けてもらうターゲットを選定しましょう。具体的には想定ターゲットの年齢や性別、職業や年収などが該当します。
リリースする商品やサービスによっては、居住地や家族構成なども重要になるでしょう。適切なユーザー属性がわからない場合は、競合他社のユーザー属性を参考にすることも有力な選定方法の一つです。
自社にとって有益なフィードバックを得るためにも、ターゲットのオーディエンスはしっかりと考えましょう。
3.テスト方法の検討
ターゲットの選定まで完了したら、ユーザーテストの具体的な方法を検討します。
基本的にはリリースする商品やサービスをユーザーに体験してもらい、その様子を撮影・記録することが一般的です。場合によっては、サービスの一部だけをテストすることもあるでしょう。
そのためユーザーテストを行う目的やターゲット属性に合わせて、やり方や実施期間を検討することが大切です。オフラインでのユーザーテストを行う場合は、使用する機材や会場などもリストアップして、必要な手続きをしておきましょう。
4.対象ユーザーの募集
テストの方法まで決まったら、対象ユーザーの募集を開始します。
企業によっても体験ユーザーの集め方は異なりますが、WEB広告やSNS、自社の顧客リストなどを活用することが一般的です。
またユーザーテストに参加してくれる方への報酬や特典などを用意すると、テストを受けてくれる顧客が増えるかもしれません。ただしユーザーテストでは正直な意見をもらうことが大切なので、報酬目当ての参加者が増えるような高価な報酬は避けるべきです。
5.ユーザーテストの開始
ここまでの準備が完了したら、ユーザーテストを開始しましょう。
参加してくれる方に目的や内容、期間や注意事項などの事前説明を行い、テストを開始します。テストの期間中に撮影や収録を行う際は事前に許可をとっておきましょう。ユーザーテストの参加者にアンケートや取材をすることで、より深いユーザー心理を引き出せます。
6.ユーザーテストの振り返りを行う
ユーザーテストが終了した後は、参加者からもらった意見や反応、データをエクセルなどにまとめて改善点を考えましょう。
ポジティブなフィードバックがあった際は、自社の強みとして伸ばせるポイントを考えることも大切です。またテストが終了した数日後に体験者にアンケートやヒアリングをすることで、考えがまとまり、当日では気付かなかったポイントを話してくれる可能性もあります。
ユーザーテストを行う際のポイント
ここからは、ユーザーテストを行う際のポイントを見ていきましょう。これからユーザーテストを実施する方は下記の項目を意識してみてください。
- ヒアリング方法を決めておく
- ユーザー行動のシナリオを考えおく
- テスト期間のデータを徹底的に集める
上記の3つについて解説します。
ヒアリング方法を決めておく
ユーザーテストにおけるヒアリングは、ユーザーから有益なフィードバックを収集するための重要な要素です。したがって参加者の属性やユーザーテストの目的にあったヒアリング方法は決めておきましょう。
具体的にはインタビューやアンケート、グループディスカッションなどが挙げられます。また長期間のユーザーテストを実施する際は、ヒアリングするタイミングを決めておくことも大切です。午前と午後1回ずつや、1週間おきなど一定の間隔でヒアリングをすることで、製品に対するユーザー心理や使い方に変化が起きるかもしれません。
適切なヒアリング方法は参加者の属性によっても異なるので、事前にリサーチを行っておきましょう。
ユーザー行動のシナリオを考えておく
ユーザー行動のシナリオとは、参加者の行動に対して仮説を立てることを指します。
例えば製品をどのように使用するか、どのような感想が来るかなどを想定することが挙げられます。ユーザーテストの参加者によっては、シナリオとは異なる行動をする方もいるでしょう。
想定している仮説と答えを検証することで、より具体的な改善策を発見できます。
テスト期間のデータを徹底的に集める
ユーザーテストの期間中は、あらゆるデータを集めることが大切です。
例えば商品やサービスの機能に関する意見だけではなく、全体的なデザインや操作性などにもフィードバックをもらえる体制を作りましょう。
また参加者の行動パターンなどのデータを集めることで、製品の機能面以外での改善点が見つかるかもしれません。顧客の声を聞くだけではなく、商品やサービスを体験している様子も記録し、さまざまな観点で気づいたことを改善に取り入れましょう。
ユーザーテストを実施する際の注意点
最後に、ユーザーテストを実施する際の注意点を紹介します。
- 誘導的なテストを行わない
- 対象者の人数を限定する
順番に解説します。
誘導的なテストを行わない
ユーザーテストを行う際に誘導的な質問や行動を促すと、適切なフィードバックを受けられない可能性があります。
そもそもユーザーテストは、ユーザーの正直な意見や感想を集める作業です。自社が期待する成果を促す行動は避けましょう。
企業側がユーザーの行動を誘導すると偏ったデータになったり、製品の有用性や課題点が不透明になったりして正確な情報を把握できません。したがってユーザーテストでは、参加者が自分の声で意見や感想を述べられる環境を作ることが大切です。
対象者の人数を限定する
ユーザーテストでは、あまりにも参加者が多すぎるとデータが分散し、テストの結果分析が難しくなることがあります。一方で参加者が少なすぎると十分なデータが得られず、製品の強みや課題点を見落とすリスクも存在します。
リリースする商品やサービスによっても異なりますが、ユーザーテストは適切な人数を設計することが大切です。
またユーザビリティの専門家、Jakob Nielsenによる執筆記事『Why you Only Need to Test With 5 User』では、ユーザーテストの人数について下記のように述べられています。
The best results come from testing no more than 5 users and running as many small tests as you can afford.
ー最良の結果はテストするユーザーを5人以下に設定し、できるだけ多くの小規模テストを実行することによって得られる。ー
引用元:Nielsen Norman Group『Why You Only Need to Test with 5 Users』(参照 2024-2-20)
サービスにより違いはありますが、大人数でのユーザーテストは避ける方が好ましいでしょう。
まとめ
ユーザーテストでは、第三者からフィードバックを得ることで、自社ではわからない課題や強みを発見できる可能性があります。参加者の人数を最小限に設定してユーザーが正直な感想を話せる環境を作り、ユーザーテストを実施しましょう。
A8.netでは、顧客行動や顧客心理の理解に役立つ「カスタマージャーニーの描き方」を配布しています。
ユーザーテストの仮説作りのヒントとして、ぜひご活用ください。