「センイル広告」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
センイル広告(応援広告)とは、アイドルや芸能人などのファンの出資によって行われる広告出稿のことです。
センイル広告は韓国発祥の広告文化ですが、「推し活」が浸透してきた日本においても広がりを見せています。普段よく見る街頭ビジョンや駅構内に広告が出せるとなれば、その費用や方法も気になるところです。
このコラムでは、センイル広告の基本情報から出稿方法と費用、その手順までまとめてご紹介します。
センイル広告の基本情報
センイル広告・応援広告とは
センイル広告・応援広告とは、アイドルや芸能人のファンが「推し」対象を応援するために広告出稿する、韓国発祥の文化です。
「センイル」とは韓国語で誕生日を意味します。ファンが推しの誕生日や特別なイベントを祝うために、街頭ビジョンや駅のポスターなどに非営利目的で広告を掲載します。
上記のような掲載場所は法人向けと思われがちですが、実は個人でも出稿可能な場合があります。不特定多数の人数に推しの存在をアピールでき、新たなファン獲得やSNS経由のオンライン上の拡散も期待できます。「推しを喜ばせたい・有名にしたい」という純粋なファン心理によって行われる、非常にユニークな広告です。
センイル広告・応援広告では、推し対象の誕生日やグループ結成日をアピールすることが多いですが、新曲のリリースやコンサートの告知を行うケースもあります。本来であればアーティストの所属事務所などが手配するPR領域を、ファンが自主的に行ってくれるのです。
センイル広告・応援広告が流行した由来
センイル広告・応援広告が流行した背景には、「PRODUCE 101」という韓国のテレビ番組の影響が有名です。PRODUCE 101はアイドルデビューを目指して集まった練習生の中からファンの投票によって最終メンバーが決定される、視聴者参加型のオーディション番組です。
番組ではファンを「国民プロデューサー」と呼称し、練習生の応援目的での写真利用を認めています。このことをきっかけに、ファンが推し対象の練習生へのプロデュースとして有志を募って広告出資するスタイルが生まれ、さまざまな場所で個人による広告が見られるようになりました。
これまではアイドルや芸能人の所属事務所が一方通行的にPRを行うことが一般的でした。しかし画像使用のハードルが下がったことで、ファンが推しに対する気持ちをクリエイティブに表現できるようになり、推しとファンの間でコミュニケーションの形が変わってきています。
日本国内におけるセンイル広告・応援広告の拡大
センイル広告・応援広告は日本国内でも徐々に拡大し、駅構内のポスターや街頭ビジョンでも実際に見られるようになりました。
その背景として、Z世代をメインとした若年層の推し活文化が広がったことが挙げられます。
Z世代は生まれた頃からインターネットが存在し、SNSを活用して他者との交流や情報収集を行います。そのためSNSのハッシュタグやコミュニティ機能を使って有志を募り、センイル広告・応援広告を実施することに対して抵抗感が少ないと考えられます。SNS経由でK-POPを中心とした韓国文化の情報が日本にも入りやすくなったことも一因です。
Z世代については、下記のコラムで詳しく紹介しています。
センイル広告・応援広告の出稿方法と費用相場
ではセンイル広告・応援広告の出稿方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは主要な手法を6つ紹介します。
街頭ビジョン
- 費用相場
- 約50,000円~1,000,000円/日 ※実際の料金は掲載期間や掲載場所などによって異なる場合があります。
街頭ビジョン(屋外ビジョン)とは、大型駅付近のビルや商業施設、ランドマークなどに設置された大型ビジョンを指します。動きのある映像や音声を組み合わせ、付近を往来する人々に対してアピールできます。
代表的な街頭ビジョンとして、新宿のユニカビジョンが挙げられます。
新宿駅は世界一乗降客数の多い駅として有名で、約329万人が行き来するエリアです(ユニカビジョン公式サイトより引用)。老若男女問わずあらゆる人が集まる新宿東口エリアに設置されているユニカビジョンは、大型LEDビジョンを3面配置しており、高い訴求力があります。
また、ユニカビジョンは靖国通りという大通り沿いに面しているため、信号待ちの人々の視線を集められる特徴もあります。ユニカビジョンの場合、15秒×4回/1h、1日72回の放映で90,000円のプランから相談可能となっています。
引用元:YUNIKA VISION - ユニカビジョン『大型ビジョン、デジタルサイネージ』(参照 2023-12-10)
交通広告
- 費用相場
- 約30,000円~3,000,000円/週 ※実際の料金は掲載期間や掲載場所などによって異なる場合があります。
交通広告は電車やバス、タクシーといった公共交通機関、また駅構内などに出稿する広告です。日本におけるセンイル広告・応援広告では、駅構内のポスターや大型看板などを利用するケースが多く見られます。
街頭ビジョンのような動的なフックは少ないものの、掲載場所や駅によっては少ないコストからチャレンジできることがメリットです。推し対象のイベント会場付近や、ゆかりのあるエリアの駅などであれば、さらにPR効果が見込めるでしょう。
交通広告の場合、1週間単位での掲載期間となることが多いため、平日仕事に向かう人や休日出かける人どちらにもアピールできる点もポイントです。
サイネージ広告
- 費用相場
- 約30,000円~3,000,000円/週 ※実際の料金は掲載期間や掲載場所などによって異なる場合があります。
サイネージ広告とは、屋外や商業施設内などのモニターを使って映像や音声を放映する広告です。広義的には街頭ビジョンもサイネージ広告に該当しますが、ここでは1,2メートル程度までの小規模なモニターを想定して紹介します。
動きのある映像でアピールできるため人々の注目を集めやすく、街頭ビジョンよりも近距離で推しを楽しめるのがメリットです。
場所によっては周辺一帯の複数モニターにすべて同じ映像を流せる場合もあり、まさに「推しがジャックする」感覚を演出できます。
付箋(ふせん)広告
- 費用相場
- 約300,000円~500,000円/日 ※実際の料金は掲載期間や掲載場所などによって異なる場合があります。
付箋(ふせん)広告とは屋外や駅構内、商業施設などの大型ボードの広告に、メッセージを書いた付箋を貼り付ける手法です。
参加者それぞれの推しへの思いを手作りで表現でき、参加者全員で協力して完成させる一体感が生まれやすい特徴があります。また、出資者だけでなく、広告を通りかかったファンも参加でき、その人数が目に見えるのもユニークなポイントです。
付箋でいっぱいになった様子は非常に華やかで、通常のポスターや看板では表せない壮観さがあります。インターネットやSNSなどが発達している今だからこそ、付箋広告のアナログな感覚は特に新鮮に感じる人も多いでしょう。
グッズ制作(フライヤーなども含む)
- 費用相場
- 約5,000円~20,000円前後 ※実際の料金は制作数や内容などによって異なる場合があります。
推しのコンサートや誕生日など、特定のイベントなどに付随して告知グッズを制作する方法もあります。フライヤー(チラシ)や紙コップ、カップホルダーなどに推しを印刷し、配布します。
費用も数千円単位で実施できるため取り組みやすく、イベントの雰囲気を盛り上げるアイテムとして役立ちます。形として残るため、お土産にもなる点が特徴です。
センイル広告・応援広告の出稿手順
センイル広告・応援広告を出稿するまでの主な出稿手順は以下になっています。
- 出稿する広告手法を決める
- 出稿業者、もしくは広告代理店に申し込む
- 所属事務所に問い合わせる
- 広告費の入金
- 広告素材作成
- 広告出稿
順番に解説します。
1.出稿する広告手法を決める
まずは広告出稿する方法を決定しましょう。
通常の広告であれば、「多くの人に見てもらう、知ってもらう」といった対外的な発信目的が多いですが、センイル広告・応援広告の場合は「有志で大きな何かを成し遂げる」ことに重きを置く場合もあります。
そのため「何のために広告をしたいのか」を明確にしておくとブレなくプロジェクトを進めやすくなるでしょう。多くの人にPRしたい場合はターゲットとなる人物像を描き、該当する層が多くいるエリアに出稿すると、SNSで拡散されやすくなります。
2.媒体社、もしくは広告代理店に申し込む
出稿方法が決まったら、広告を販売している業者(媒体社)や広告代理店に申し込みましょう。
手順ややり取りに不安がある場合は広告代理店に依頼することも有効です。煩雑な手続きや業者とのコミュニケーションを代理店が担ってくれます。代理店によっては広告素材の作成も依頼できるケースもあります。
3.所属事務所に問い合わせる
著作権や肖像権といった法律違反を避けるため、センイル広告・応援広告を出稿する際は推し対象の所属事務所に写真や画像の使用許諾を得る必要があります。
例えば、「センイル広告・応援広告が流行した由来」でご紹介したPRODUCE 101の日本版公式サイトでは、出演者の顔の加工・修正NGなど事前にルールを設定しています。
PRODUCE 101公式サイト『国民プロデューサーの皆様へ 推しの練習生を応援するにあたってのお知らせ』(参照 2023-12-10)
推し対象を悲しませないためにも、ルールを守った広告を心がけましょう。
4.広告費の入金
所属事務所から許諾が取れたら、広告費を入金します。
5.広告素材作成
広告を出稿するための画像やイラストを作成します。
所属事務所から「出稿前に作成物を確認しておきたい」といった要望が入る場合や、不測の事態に備えて納品期限よりも早めに完成日を設定しておくとよいでしょう。
6.広告出稿
すべての準備完了後、広告を出稿します。
広告の様子をSNSのハッシュタグ投稿などで拡散し、多くの人にアピールしましょう。
まとめ:推し活に関する記事も公開中!
いかがでしたでしょうか。
本コラムでは、センイル広告・応援広告の内容や費用、広告出稿までの流れをご紹介しました。
PR効果を最大限に引き出して拡散されるには、ターゲット層の理解が欠かせません。
推し活の市場規模や消費行動の特徴をまとめた記事は、下記のバナーからご覧いただけます。この機会にぜひご参照ください。