近年では、「アンバサダー」を起用したマーケティング手法が注目されています。
しかし、具体的な施策内容や実施方法に悩む方も多いのではないでしょうか。
第三者の目線で訴求してもらえるアンバサダーマーケティングには、それぞれメリット・デメリットが存在します。
アンバサダーへのPR依頼を検討している方は、正しい方法を理解して損はありません。
本コラムでは、アンバサダーマーケティングの意味やメリット・デメリット、具体的な実施方法などについて解説します。
注意点もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
アンバサダーマーケティングとは
アンバサダーマーケティングとは、自社の商品やサービスを利用する特定のユーザーにPRしてもらうマーケティング手法の一つです。
アンバサダー(Ambassador)とは「大使」を意味しており、マーケティングにおいては企業や組織から依頼を受けてPRを担当する人を指します。
PRする商品やサービスを実際に利用しているユーザーがアンバサダーに任命されることが多く、熱量の高い情報発信が期待できます。企業によっては大勢のアンバサダーを募り広報活動を行うケースも増えており、注目度の高いマーケティング手法といえます。
アンバサダーマーケティングとインフルエンサーマーケティングの違い
アンバサダーマーケティングと近い手法として、「インフルエンサーマーケティング」が挙げられます。
双方は非常に似ていますが、マーケティング手法には大きな違いがあります。
インフルエンサーマーケティングは著名人や発信力のあるユーザーにPRを依頼することが一般的です。自社の商品やサービスを利用していないユーザーにPRを依頼することも多く、認知拡大や購買を目的に利用される手法といえるでしょう。
一方でアンバサダーマーケティングは自社の商品・サービスを利用しているユーザーが対象であり、影響力や発信力だけでアンバサダーを決めるケースはほとんどありません。企業によっては自社の商品に関心のあるユーザーを募り、「商品に対する個人の想い」を重視している傾向にあります。
認知拡大を目的にすることは同じですが、具体的な手法や依頼・任命のしかたには大きな違いが存在します。
アンバサダーマーケティングが注目される理由
アンバサダーマーケティングが注目されている大きな理由として、ユーザーの価値観の変化が挙げられます。
これまでのビジネスは広告を活用して新規顧客を開拓することが一般的と考えられていました。しかし、インターネットやSNSが普及したことでユーザーが正確な情報を入手できるようになり、現在では口コミや評判といった信頼性のある情報が求められています。
アンバサダーマーケティングは実際の利用者が商品やサービスに関する情報を発信することが一般的です。そのため広告を使った手法よりもリアルな訴求ができ、近年で注目されるマーケティング手法の一つになったと考えられます。
アンバサダーマーケティングのメリット
アンバサダーマーケティングには、下記のメリットが存在します。
- 有益なフィードバックをもらえる
- 広告コストを削減できる
- 第三者目線での訴求ができる
それぞれ順番に見ていきましょう。
有益なフィードバックをもらえる
アンバサダーを引き受けてくれるユーザーは商品やサービスに愛着をもっていることが多く、有益なフィードバックをもらえることも少なくありません。
例えばアンバサダーと商品開発を行ったり、アンバサダーを含めたミーティングを実施したりする企業は多く見られます。企業側では気が付きにくい具体的な改善案をアンバサダーからもらえることもあるため、自社の商品・サービスの改善に役立つ情報を入手できるでしょう。
広告コストを削減できる
アンバサダーマーケティングは、金銭以外の報酬でユーザーと契約することがしばしば見られます。
自社製品やサービスの無料利用や無料体験などを報酬とする企業が多く、広告運用による集客・認知拡大よりもコストを大幅に削減できる可能性があります。
ファンの多い商品・サービスの場合、商品開発に携われる体験に興味のあるユーザーがアンバサダーになるケースも少なくありません。そのような場合、広告予算をカットしながら、サービス改善や認知拡大が期待できます。
第三者目線での訴求ができる
従来の広告手法とは違いアンバサダーが自発的にPRを行ってくれるため、アンバサダーマーケティングはより質の高い第三者目線での訴求が期待できます。
自社のファンだからこそ伝えられる商品やサービスの魅力があり、企業が発信する情報よりもユーザーに刺さる可能性もあります。口コミやレビューなど第三者からの視点は、ユーザーにとって信頼できる情報となるのです。
アンバサダーマーケティングのデメリット
さまざまなメリットがある一方で、アンバサダーマーケティングには下記のデメリットも存在します。
- 適切なアンバサダーを見つけることが難しい
- 特定のデータ測定が困難
順番に解説します。
適切なアンバサダーを見つけることが難しい
アンバサダーを依頼・任命するには、自社の商品やサービスに強い関心をもつユーザーを見つける必要があります。
しかし、企業によってはファンの確立が難しく、自社に適切なアンバサダーを発見するのに苦戦するかもしれません。そのため、自社に合ったアンバサダーを見つけるためには工夫が必要です。
一般的にはSNSなどで自社商品に関する発信をしているユーザーを探す方法が多く見られます。また近年では商材の特徴にあったアンバサダーを紹介するサービス・企業も増えています。そのようなサービスも検討してみましょう。
特定のデータ測定が困難
アンバサダーマーケティングは認知拡大に活用できる手法の一つですが、データの計測方法は困難な傾向があります。
例えばGA(Googleアナリティクス)やSNSのアナリティクスなどでは、アクセス数やコンバージョンの全体的なデータは入手できます。
しかし、どのアクセスがアンバサダーマーケティングによるものなのかを見極めることは、非常に難しいです。対策としては、定期的にアンケート調査などを実施し、商品やサービスを知ったきっかけなどをリサーチする方法があります。アンバサダーマーケティングを行う際は、データの取り方も事前に決めておくとよいでしょう。
アンバサダーマーケティングの具体的な実施方法
ここからはアンバサダーマーケティングを行う方法を解説します。
具体的な考え方は企業によって異なりますが、一般的には下記の通りです。
- 既存顧客の分析・理解
- マーケティング施策の目標を決める
- アンバサダーを選定する
- アンバサダーの依頼・応募を開始する
- 発信・PRを開始する
順番に見ていきましょう。
1.既存顧客の分析・理解
まずは自社にどのような顧客がいるのかを理解しておきましょう。調査項目として、例えばユーザーの年収や居住地などの属性、商品の購入頻度などが挙げられます。
アンケート調査などを通し、既存顧客の調査を行いましょう。提供するサービスが誰に喜ばれているかを明確にすることで、依頼すべきアンバサダーを具体的にイメージできます。自社の価値観に共感してくれるユーザーに情報を届けるためにも、既存顧客の分析は徹底的に行ってください。
2.マーケティング施策の目標を決める
アンバサダーマーケティングを実行する際は、明確なマーケティング目標を決めておきましょう。
具体的には商品やサービスの認知度や、自社のイメージアップなどが該当します。また展開するビジネスによってはインターネット上の認知度ではなく、特定の地域での定着が目標になるかもしれません。
目標がブレると適切なアンバサダー選定に時間がかかる可能性があります。企業によっては自社の目標をアンバサダーに伝えてPRしてもらうケースもあるので、具体的な目標を決めておきましょう。
3.アンバサダーを選定する
顧客調査と施策の目標を決めたら、自社に適切なアンバサダーを選定しましょう。
アンバサダーを選ぶ際は、施策の目的を基準にして選ぶことが一般的です。
例えばWEB上でのイメージアップを目的にする場合、SNSで積極的に発信している方や、発信者にファンがついているユーザーを選ぶと良いかもしれません。特定の地域で認知を拡大したい場合はSNSなどでの発信力ではなく、その地域で積極的に活動している個人や企業が対象になると考えられます。
InstagramやX(旧Twitter)、ネット上のメディアなどを活用して、自社に適切なアンバサダー候補をリストアップしてみましょう。
4.アンバサダーの依頼・応募をする
アンバサダーの候補を見つけたら、依頼・応募を開始しましょう。
アンバサダーを依頼する方法としては、SNSから直接連絡する企業が多く見られます。応募要件を記載したフォームを作成して、アンバサダーを募る企業も少なくありません。任命するアンバサダーの人数や予算などを考慮して、自社に適切なパートナーを見つけましょう。
ただし実際に依頼する前に、自社の商品やサービスをどれだけ理解してくれているかを確認することも大切です。お互いにとってプラスの関係を築けるよう、アンバサダーを依頼したい人の考え方や価値観も理解しておきましょう。
5.発信・PRを開始する
アンバサダーとの契約が完了したら、PR活動を開始しましょう。
自社の目的に適した方法でPRをしてもらいます。例えばTikTokやInstagramなどで発信をしてもらう場合は、コンテンツに掲載してもらうハッシュタグなども考えておくとよいでしょう。特定の地域での認知拡大を目的にするなら、イベントを開催してアンバサダーに出演してもらう方法もおすすめです。
アンバサダーマーケティングの事例3選
ここからは、アンバサダーマーケティングで成果を挙げている企業の事例を紹介します。企業によって具体的な施策も異なるため、ぜひ参考にしてください。
NESCAFE
良質なコーヒーを提供することで有名な「NESCAFE」は、アンバサダーマーケティングで結果を出している企業の一つです。「ネスカフェアンバサダー」というセリフに覚えがある方も多いのではないでしょうか。
企業や個人事業主がアンバサダーとして活動しており、アンバサダーに就任した方の事務所には無料でコーヒーメーカーが提供されます。企業に所属する従業員や外部の関係者など幅広いユーザーに製品が認知されるため、認知拡大に成功している企業といえるでしょう。
アンバサダーを常に募集していることもあり、今では45万人以上の企業・個人がNESCAFE製品のPRを行っています。
出典元:【公式】 ネスレ通販オンラインショップ『オフィスコーヒーなら ネスカフェ アンバサダー』(参照 2023-12-20)
リクルートワークス研究所(千野翔平著)『ネスカフェ アンバサダー45万人はいかに生まれたのか?』(参照 2023-12-20)
ワークマン
ワークマンはもともと作業服や作業用品などを販売する企業でした。
ある時にワークマンの製品を着用してキャンプをしているユーザーの発信が火付け役となり、アウトドア製品を開発。第三者の目線が大切だと考えたワークマンは2019年からアンバサダーマーケティングに本格的に取り組みます。
ワークマンのアンバサダーに金銭的な報酬はないものの、顔出しができる方は公式ホームページで紹介してもらえます。企業からのオファーがない限りアンバサダーには就任できないため、SNS上でワークマンのアンバサダーを目指す発信者が増えつつあるのです。
出典元:株式会社ワークマン『WORKMAN/ワークマンプラス公式アンバサダーご紹介』(参照 2023-12-20)
株式会社ワークマン『ワークマンは「アンバサダー・マーケティング」を本格化します - ワークマン公式サイト』(参照 2023-12-20)
Makuake
Makuakeは国内で有名なクラウドファンディングサービスの一つです。
商品やサービスのPRではなくMakuakeに掲載されているプロジェクトをアンバサダーが紹介します。Makuakeだけではなくプロジェクトの発信者の認知も拡大できるため、現代にあったマーケティング施策といえるでしょう。
アンバサダーに就任したユーザーは掲載されるプロジェクトの先行体験ができます。アンバサダーを交えたMakuakeのミーティングも開催されるため、アンバサダーにも魅力的なマーケティングと考えられます。
出典元:株式会社マクアケ『アタラシイやワクワクを広げるMakuake公式アンバサダーオフィシャルサイト』(参照 2023-12-20)
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社『ブランドパーパスに共感を 〜Makuakeの応援型アンバサダーマーケティング〜 | 成功事例インタビュー』(参照 2023-12-20)
アンバサダーマーケティングを実施する際の注意点
最後にアンバサダーマーケティングを実施する際の注意点を紹介します。
- 炎上リスクに注意する
- アンバサダー側のメリットも設計する
上記の項目を意識して自社に適切な施策を行ってください。
炎上リスクに注意する
SNSなどを活用したPRをアンバサダーに依頼する際は、発信内容に注意する必要があります。
例えば自社と競合他社の製品を比較して相手企業を下げる発信などを行うと、その発信自体がユーザーに悪印象を与え、結果的に自社ブランドのイメージダウンになる可能性があります。
そのためネット上などでPRを依頼する場合は、アンバサダーが投稿する前に内容を確認したり、適切なレギュレーションなどを作成したりして炎上に注意することも大切です。
アンバサダー側のメリットも設計する
金銭的な報酬が少ないアンバサダーマーケティングですが、アンバサダーの具体的なメリットは設計する必要があります。
例えば「ワークマン」は「アンバサダーになることが価値」となっています。企業によっては製品開発に携われる「体験」を価値にすることも少なくありません。アンバサダーは自社にとって大切なパートナーなので、PRしてくれるアンバサダーのメリットも考えておきましょう。
まとめ:効率的にアンバサダーを見つける方法
アンバサダーマーケティングは広告よりも効果の高い訴求ができたり、自社にとって有益な意見をもらえたりするメリットが存在します。
第三者の目線での認知拡大を行う方は、アンバサダーマーケティングに取り組んでみてはいかがでしょうか。
ただし企業だけで適切なアンバサダーを見つけるには時間がかかるかもしれません。そのような場合は多くのインフルエンサーの力を借りられる、アフィリエイト広告の活用も有力な手段です。
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